塩見岳の標高について
2019年5月
 国土地理院は、山の高さの見直しを継続して行っている(注1)。地殻変動や地形変化により数値が変更になることもあるが、それ以外に、測定されていなかった「本当の山頂」の高さが明らかにされることもある。山頂付近にある三角点の高さがその山の高さとされることが多かったが、三角点はあくまでも三角測量のための基準点であり、「本当の山頂」の高さを示すものではない。そのため山頂の正確な値を知りたいという声が多く出て、点検や補足測量などを行い、2万5千分1地形図や地理院地図に表示されるようになった。 有名な例では、日本第2位の高峰北岳の変更がある(注2)。また、最近の例では八ヶ岳連峰の横岳が変更になった(注3)。
 こうして、多くの山の正確な標高が明らかになってきたのだが(注4)、著名な山でそうなっていない唯一?の例が南アルプスの塩見岳である(長野県伊那市・静岡県静岡市)。
 国土地理院の「日本のおもな山岳一覧」では次のようになっている。
 三角点の標高値3047mが塩見岳の高さとされている。
 地理院地図では次のように表示されている。
 しかし、塩見岳については、三角点よりも高いピークがあることはつとに知られていた。深田久弥『日本百名山』の塩見岳の項にも次のような記述がある。
 「頂上は二つの隆起から成るが、三角点のある峰より、その東にある峰が幾らか高い。」
昭文社の「山と高原地図」では東峰を3052mとしている。
 明瞭な違いがあるに関わらず、注1の見直し作業でなぜ検討されなかったのか、またその後も、日本で数少ない3000m峰であるのに何故そのままにされているのか不思議である。
 登山愛好家の間では、経過について詳しい報告をした人がいる(注5)。またデジタルマップを使い、東峰の標高値を推測した報告もある(注6)。

 今更ではあるが塩見岳の「本当の山頂」の高さについて、地理院地図の標高測定機能やスーパー地形(カシミール3Ⅾ)を使いどこまで明らかにできるか、試みてみた。

■地理院地図
 地理院地図は、中心十字線の位置の情報が表示される。
(1)三角点
 下段に「標高:3047.3m」と表示される。
(2)東峰
 地理院地図には東峰の表記はないが、南東の稜線にそって中心十字線を移動した。
南東約90mの地点に、3049.9mの地点があった。付近を何か所かクリックして同様の結果を得たが、3052mの地点は見当たらなかった。
■スーパー地形(カシミール3D)
 段彩表現を1㎝単位で設定できる。3047m以上を50㎝単位で設定した。東峰が高くなっていることがはっきりわかる。右側にマウスポインタの位置の情報が示されるが、それによれば、3050.321mとなっている。 
(パレット)
(まとめ)
  塩見岳は西峰と東峰の2つのピークに分かれている。
  三角点は西峰にあり、その高さ3047mが塩見岳の標高とされている。
  しかし、東峰が高く、山岳地図などには3052mとされている。
  但し、その根拠は明確ではない(注5)。
  地理院地図の標高データなどから3050mという読み取りができた。
  国土地理院は山岳標高の見直しをしてきたが塩見岳についてはなされていない。
  数少ない3000m峰の正確な高さが不明というのは残念なことである。
  国土地理院は何らかの調査を行い、塩見岳の東峰の高さを明らかにして欲しい。




(注1)最初のとりまとめは、『日本の山岳標高一覧-1003山』(1991年)。
 最近(平成21年度以降)の変更例は、国土地理院のウェブサイトで見ることができる。
    http://www.gsi.go.jp/common/000208441.pdf
(注2)小サイト「北岳の標高変更について」
   http://yamao.lolipop.jp/kita/kitadake.htm
(注3)小サイト「八ヶ岳横岳の標高が変更になっていた!」
   http://yamao.lolipop.jp/map/2019/yokodake.htm
(注4)三角点と「本当の山頂」が違う例やその見つけ方については小サイト「山頂と三角点の標高が違う山」参照。
   http://yamao.lolipop.jp/map/2019/hyoko.htm
(注5)「塩見岳の標高はいつ変わったのか」(2012年)      
   https://www.yamareco.com/modules/diary/21844-detail-41671
(注6)「塩見岳の標高」(2013年)
   http://fyamap.jizoh.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=98
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