あとがきにかえて
 私は42年間、高等学校で地理を担当してきました。地理は自然から人文、社会まで幅広い内容を持つ科目ですが、特に地図こそ地理の特徴が示せる分野と思い、力をいれてきました。
 そうした経験を踏まえて地図教育について思うことを記し、あとがきにかえたいと思います(高等学校を念頭においています)。
内容的には大きく4つの分野があります。展開の仕方は必ずしもこの順番でなくても構いません。

(1)小縮尺の地図
 いわゆる地図投影法です。地図の歪み(地図の正しさ)、縮尺、方位という基本概念に加え、メルカトル、正距方位、サンソン、モルワイデ、グード図法など基本的な図法について触れます。
 地図投影ソフト(GeoStudioなど)を活用すれば、球面が平面に多様に形を変えることをビジュアルに示すことができます。

(2)大縮尺の地図 
 地形図の読図と作業です。マニア的に地形図に拘る教員がいる一方で、等高線を重視する地形図学習が地図嫌いを増やしているという地形図否定派がいます。ともに問題です。紙地図の将来はどうなるかわかりませんが、基本図としての地形図を学習する意義は、今後しばらくの間は無くなることはないでしょう。

(3)主題図(各種地図の利用と作成)
 生徒が日常的に利用する各種主題図をもっと活用する必要があります。単に利用するだけでなく、適宜描画する力の育成も課題だと思います。デジタルマップ、GIS、地図ソフトの活用もこの項で扱いたいところです。今後この比重が高まるでしょう。

(4)地図史
 地図もその時代、社会のあり方に規定される社会的存在です。社会の中に位置づけた地図の歴史を学ぶことは、地図の今後を展望する上でも不可欠の学習事項です。戦時改描図や外邦図も視野に入れる必要があります。


 ところで、本書のまとめの時期に、一身上に大きな変化がありました。2014年3月に高校を退職し、“悠々自適の生活”に入ったのもつかの間、2015年6月より(一財)日本地図センターに勤務することになったのです。同センターは国土地理院が作成する地図や空中写真の複製頒布をおもな業務とする組織で、以前より付き合いはありましたが、「外の人」から「中の人」になるとは思いもしないことでした。

 名前の通り、地図資料の宝の山ですが、いかんせんそれを活用する時間がありません。教員時代とは全く違う種々の業務に追われ、その影響がこの原稿に及び、半年近く遅れてしまいました。その分、最新の内容を盛り込め、またセンターにいたからこそ書けた内容もあります。機会を与えていただいた野々村理事長、貴重な資料を快く提供してくださった同僚、関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。

 世界の地図の項は、一身上の変化がなくてももともと無謀でした。その方面の最適の人を得て(泣きついて)、仕上げることができました。(略)

 原稿を入れていたハードディスクが読み込めなくなり、大金をはたいて修復するといううアクシデントもありました。バックアップは大事です!担当の五島さんには大変ご迷惑をかけてしまいました。図版や写真の整理など今まで以上に煩雑な仕事を丁寧に行って下さり 心より感謝いたします。

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