.先生に言われたこの一言が・・・

言葉とはとてもつかみどころのない、複雑なものであると私は思う。言葉がなければ、傷つく事もないかもしれない。しかし、言葉は人の感情を動かし、人の心の支えとなってくれる事もある。私自身、先生から言われた言葉で何度も背中を押され、素直に涙を流し、心強くなれた。

私の人生の中で先生から言われて心にとめた言葉がある。

まず1つ目は、私が小学生の時に言われた最も尊敬する恩師からの言葉である。
 当時の私は言葉の真意というものが理解出来ず、形式的な善い行いをして先生から評価される事が当たり前の様に感じていた。先生から言われた事に忠実に従っていたが、心から相手を思って行動する事は少なかった様に思う。

ある時、恩師から「自分がしてもらいたいと思う事を人にもしてあげなさい」という聖書の言葉についてのお話を聞いた。

 自分の利益や名誉を求めるよりも先に、自分ならどのようにしてもらいたいか考えて相手に接する事が大切であるという話であった。私はこの言葉は何十年経っても、いつ、どんな状況に置かれても色あせる事なく大切な存在で、不変的な言葉であると思う。特に教育において人と人が繋がる事とはどの様な事であるか、示してくれる道標の様な存在であると思うのだ。

 私は時に人を傷つけ、自分自身も傷つく時がある。人の幸福より、自分が相手に尽くした事に対する見返りを求めてしまう事もある。誤解が解けない理不尽な世の中にため息をつく事もある。そんな時は、ふとこの言葉を思い出して、「次は相手の立場になってきちんと考えよう。」と考える。

 この言葉を聞いてから、徐々に自ら進んで何かに取り組む事が増えた。周囲を見て自分のすべき事を行い、人から言われた感謝の言葉には私の心が温かくなった。恩師の言葉には『相手の気持ちになって考える強さ』、『本当の優しさ』が含まれていると思う。

この言葉を思い出すたび感じる事は、教育とは読み書き算といったいわゆる評価される学力を教えるだけではなく、こうした日常の中で大切な一言を他者に伝える事が大切であると思う。こうした一言は人の心の支えとなり、成長させてくれるのだろうと感じる。

2つ目は現在の顧問の先生から言われた一言である。

「頑張っていますね。」という一言が私の心に深くしみた。

私は、小学生の頃に日々お世話になっている方にお手紙を書くという経験をした。その時、担任の先生から必ず、「頑張ってくださいと書くのは頑張っている人に対して失礼であるので、書かないように。」と注意されていた。その頃の私は一体どうしてその言葉がいけないのか、理解できなかった。そして日々の生活の様々な出会いと経験の中で、成長と共に人にはそれぞれ頑張るメーターが存在するという事が分かった。自分の頑張りが相手の頑張りと対等になる事は必ずしもないという事だ。つまり、自分なりに一生懸命行っている事に対して、それ以上の頑張りを求める事が失礼であり、時に人を傷つけてしまう事があるのだ。人は激励をおくる為に他者に対して「頑張れ」といいがちであるが、それは逆に人に緊張感や不安を与えてしまうのだと思う。

 自分自身も心の中では助けて欲しいと感じていても、「自分がしっかりと前に立たなければ」、「責任を持たなければ」と思う事が増えた今、気を張って自分を保っている時もあった。

 そんな時、顧問の先生から「吉歳さん、いつも頑張っていますね。」と言われた。私はいつも誰かに「頑張って」と言われる事が多かったので、この一言を聞いて初めて「自分は今頑張っているのだ」と感じた。私が頑張っている事を理解してくださっていた事が何よりも嬉しかった。

 誰かを励ます言葉も大切であるが、教育において私が最も大切だと感じるのは、相手の気持ちを自分の心の中で考え、感じる事であると思う。

 先生と子どもはお互いに矢印が向き合う関係でなければならないと教育学で習ったが、その関係には子どもの今を教師が気付き感じる事、そして気持ちを共有する事が大切であると私は思う。この言葉もまた私に『強さ』を与えてくれたと思う。

 これまで先生から言われた一言について2点述べた。

 レポート作成のテーマが『先生に言われた一言が・・・』であったが、私にとって『・・・』の部分は『相手を思い主体的に行動する強さを与えてくれた』であると思う。

『思いやりの心』は大切な事であり、幼い頃から教わってきた言葉だ。しかし、中々行動に移す事が出来ない難しい言葉でもある。

 現代社会を生き抜く中で、周囲の人から見た自分を想像して行動する事もあれば、自分の立場を考えて行動する事もある。しかし、そうした行動には人の心を感じない。

 恩師から言われた「人にしてもらいたい事を人にもしてあげなさい。」という言葉や先生から言われた「頑張っていますね」という言葉には相手に対する思いやりの心がある。

 私が相手に一言伝える立場となった時人の心を温め、動かせられたら良いと思う。

私の通っていた学校は中高一貫校で、中学からの一貫生は学年主任が6年間同じだった。学年主任は2人いて、そのうちの一人の先生の一言がとても心に残っている。先生は、私たちの学年主任であった6年間の、機会あるごとに「思いやり・挨拶・笑顔」と繰り返してきた。大体いうのは、皆さん、多少頭が良くなくても、「思いやり・挨拶・笑顔」この三つさえきちんとできれば何とかなる。人間に大切なのはこの三つだ!他にも身に着けてもらいたいこと、できた方がいいことはたくさんあるが、この三つは忘れてはいけないと耳にタコが本格的にできはじめるのではないかと思われるほど言われ続けた。この言葉を初めて言われたときは、なんとも思わず、それだけできるより、もっと英語話せるとか、頭が良い方がいいのではないかとか、その程度の事別に難しくもなんともないだろう、一般的に誰でもできることではないのかと思い、時に気にも留めていなかった。

しかし、今この三つをなそうとすると意外と難しくてびっくりした。できないことはないが、徹夜明けの頭痛と吐き気の中では上手に笑えないし、テストが立て込んでいるときに他の人にまで気がまわらない。シンプルで一見簡単そうなものも意外と難しいものだと感じた。ただ、先生が耳にタコができるくらい、口が酸っぱくなるくらい何度も何度も教えてくれた言葉は、今私にとって掛買いのない財産になっている。何か困ったとき、悩んだときこの言葉を思い出し、笑顔で挨拶したり、自分にできるちょっとした思いやりの行動をとったりすると、大丈夫!今日も頑張ろうと活力がわいてくる。大変な時こそ、先生の教えてくれた三鉄則を忘れてはいけないと思うから。先生はどんな気持ちでこのことをしつこく何度も言ってくれていたのか知らないが、私の中でこの言葉はよりどころとなって確かに根付いている。先生に言われたこの一言が私にとっては大切な宝物だ。

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