一.マウンテンウオッチングの世界へ

 町から、山から、何時も飽きることなく山を眺めて楽しんでいます。はやりの言葉を使えば、マウンテンウォッチング   。とても楽しい世界です。何故そ れが楽しいの、と聞かれると、色々理屈も言えますが、結局は、楽しいから楽しい、と言うしかありません。これに取りつかれて十数年、しかし、そのきっかけ は思いがけない出来事でした。最初から個人的な話で恐縮ですが、マウンテンウォッチングに取りつかれるようになったいきさつから話させてください。

 父親の影響があったのか、小さいころから地理が好きだった私は、大学で地理学を専攻しました。人文地理が専門でしたが、地形学にも関心がありましたの で、山とは”近い位置”にいたはずなのですが、登山にも、山を眺めるということにもまるで関心がありませんでした。ワンゲルの友人もいたのですが、登って 降りて、それで何が面白いの、と憎まれ口を叩いていたそうです。それがこうなったのは、思いもかけぬ交通事故がきっかけでした。教員になった最初の年に、オートバイで通勤中に自動車にはねられ、右足首を骨折してしまったのです。そのリハビリをかねて箱根の外輪山を歩いたのが、意識的に山を歩いた最初でした。秋 晴の下、正面に富士山を見ながらの”山歩き初体験”は誠に快適でした。こうした世界もあるのかと文字通り視野が広がる思いでした。初めてのボーナスでカメ ラを買い、写真に関心を持ち始めていた時期でしたので、山と写真が結びつくようになりました。天気の良い日を選んで登りますから、遠くの山もよく見えま す。そうなると、その名前も知りたくなります。知らない山の名前を明らかにすることを「山座同定」と言いますが、職場に山好きが何人もいて「地理の教師な のに山座同定もできなくてどうする」とハッパをかけられたのも幸いでした。災い転じて福となる? こうして”山岳展望”との付き合いが始りました。

『山岳展望の楽しみ方』(山と溪谷社)より