日本全域を示すのにふさわしい投影法は?
2020年1月
日本全域(と言っても厳密に日本の領土全部ではなく、沖縄から北海道までの日本列島)を1画面で示すにはどのような投影法がよいのでしょうか。その程度の範囲なら投影法は気にしなくてもよいのでしょうか。
まずは地理院地図を見てみましょう。
図は、地理院地図ズーム5です。見慣れた地図で、違和感はないでしょう。
しかし、沖縄と北海道では面積にして1.6倍程度の違いがあるのです。地理院地図の投影法は、メルカトル図法なので、高緯度ほど拡大されるからです。北海道が実際よりも大きく見えているのです。
■1.6倍程度という数値を求める方法
1.6倍程度という数値を求める方法は幾つかあります。

(1)計算による方法
 メルカトル図法の緯線方向の拡大率はsec φ(緯度)です(地図投影法の専門書に記されています)。
 緯度25度(沖縄)では約1.1倍
 緯度45度(北海道)では約1.4倍
 面積の拡大率を求めるので、1.4÷1.1 の2乗で約1.6という数値がでます。
(2)スケールバーでの比較
 地理院地図は左下にスケールバーが表示されます。
 ズーム5の場合300kmになります。
 注意しなければいけないのは、バーがある位置の長さではなく、図の中心(中心十字線のある位置)の長さなのです。
 北海道北部と沖縄本島に中心十字線を置いた時のバーを並べたのがこの図です(上が北海道北部、下が沖縄本島)。
 ピクセル数の比較で行ってみました。上は103、下は81ピクセル。103÷81 の2乗で約1.6という数値になりました。(1)と同じです。

(3)面積の比較
 文字通り面積を比較する方法についても述べておきましょう。色々ありますが、ピクセル数を比較する方法をとりあげます。ある地域を塗りつぶしてピクセル数を比較するというやりかたです(ある色のピクセル数をカウントしてくれる「ピクセルカウンター」というフリーソフトを使用)。作業の手間をかけないようにするためにあまり大きな地域を選ばないようにしました。今回は沖縄本島と国後島をとりあげました。正積図法で作成した地図上で両者の比較を出します。それがメルカトル図法ではどうなっているかを調べればよいのです。描画に使用した地図投影法ソフトは「ジオスタジオ」です。
 沖縄本島 1207km2
 国後島   1490km2

メルカトル図法では、沖縄本島は5123ピクセル、国後島は10577ピクセルになりました。
 実際の面積での倍率は1.23
 ピクセル数での倍率は2.06
 メルカトル図法上では2.06÷1.23 で約1.7倍拡大されていることがわかります。
 塗りつぶしに使った形がかなりアバウトではありますが、(1)(2)と大きな違いがないことがわかります。

 同一画面の上と下で約1.6倍の違いがあることを大した問題ではないとするのか、国土を同一縮尺で見ることができないのは問題だとするのか、受け止め方は様々あるでしょう。
いずれにせよ現時点では、国土を同一縮尺で表現できていないという実態があることは認識しておく必要があります。
適切な正積図法は?
 仮に国土を同一縮尺で描くとしたら正積図法の中で何図法がよいでしょうか。2つ考えられます。
(1)サンソン図法
 この図法の特徴は、緯線が実長であることです。全ての緯線の長さが縮尺通りになっているのです。緯線の長さが最短距離になるわけではありませんが、他の図法にはないこの図法だけの特徴ではあります。

中央経線:130度
(「ジオスタジオ」で作製。作製時の縮尺は1000万分1)
正積であり、かつ緯線の長さは実長という好条件を持つのですが、気になる点は、経線が湾曲すること。それはこれらの条件を満たすためには仕方ないことですが、経緯線は直交している方がよいと考える人もいるでしょう。それは否定はしません。
(2)正積円筒図法
(「ジオスタジオ」で作製。作製時の縮尺は1000万分1)
正積で、経緯線は直交しているなかなかよい図法です。標準緯線の取り方で「縦方向」の形が違ってきます。これは標準緯線は35度にしてます。北海道がつまった感じと思われるでしょうか。円筒図法なので、経線はどこも直線です。スクロールした際に違和感はないでしょう。

縮尺の切り替えやスクロールを考えると、地理院地図で正積円筒図を選択できるようになると、国土認識の上で、教育上も好ましいと思います。

なお、国土地理院は、「我が国を構成する主な離島を含め、日本の国土を1枚で表す地図「500万分1 日本とその周辺」を刊行しています」。この地図は、日本経緯度原点を地図主点とする正距方位図法です。正積方位図法ではありません。このことについては、別の機会に述べたいと思います。
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