分布図にメルカトル図法を使ってはいけない
2020年7月20日
 地球儀上の面積が地図上でも再現されている地図が正積図法です。地図は空間的に広がりのある現象を表すものですから、特に分布図などの主題図において、ベースになる地図が正積でないと誤解を招いてしまいます。地理の教科書にも「正積図は、分布図の基図として利用されるなど、世界全図として最も一般的な図法といえる」などと書いてあります。地図表現の基本の基ですが、改めて確認しておきましょう。
 しかし、その理由については、自明のことだからか述べてありません。下の図で説明しましょう。試行錯誤の末この図を考えつき、あちこちで紹介しているものです。
図1
 A、Bはほぼ同じ面積の国で、ある事象の分布状況はほぼ同じとします。しかし、地図にした、A’とB’を比べると随分異なった印象を受けます。A’は、B’に比べると「スカスカ」のように見えます。ベースになる面積が大きくなっているからです。

 これは仮の話ですが、実際にこうした例があります。以下の図をご覧ください。
図2                                  図3 
 ウガンダとイギリスです。両国はほぼ同じ面積です(約24万平方q)。ある事象が10のドットで表現されるとします。正積円筒図法では分布密度は同じように見えます。
 しかし、右側のメルカトル図法では高緯度にあるイギリスは拡大されます(実際の約3倍)。ウガンダはほとんど変わりません。その結果、分布密度は、イギリスは随分スカスカになってしまいます。
 広がりを示す地図の基図にメルカトル図法のような面積の歪みが大きくなる地図を使ってはいけないことがよくわかります。
 同様な例をもう一つあげておきましょう。
図4
 では正積図法ならどのような地図でもよいのでしょうか。
 代表的な正積図法のサンソン図法を考えてみましょう。サンソン図法の周辺部、特に高緯度地方は正積の性質を維持するために歪みが非常に大きくなっています。高緯度地方では面積が狭くなっているので、地図上では当然小さくなってしまいます。この状態で分布状態を示すことは困難です。図5の場合周辺にくる中国の分布状態は何かあるぞということはわかりますが、地図表現として好ましいものではありません。
図5
 もちろん、それが中央部に来る場合は問題ありません。図6は決して不自然な表現ではありません。
図6
 その分布が局所的なものなのか、世界全体を対象とするものなのかによっても異なってきます。ケースバイケースで、図法そして中央経線をどこにおくかなどのパラメータの選択を行うことが必要です。

 さらに一般論で言えば、絶対に正積図法を用いなければならないということではなく、
全体として見栄えのよい世界地図の使用も検討すべきです。具体的にはミラー図法、ヴィンケル図法、ロビンソン図法などです。新しいところではイコール・アース図法もあります。
 「地図は見た目が勝負」です。科学性と同時に見た目、実用性も考えてどのような図法がよいのか、考えていく必要があるでしょう。繰り返しますが、少なくともメルカトル図法を分布図の基図にすることは避けなくてはなりません。
ロビンソン図法とイコール・アース図法は非常によく似ています。
■参考
メルカトル図法による分布図  実は必ずしもそう多くはありません。
1.世界のシェールガス・シェールオイルの埋蔵分布図(2013年)
EIA(U.S. Energy Information Administration アメリカ合衆国エネルギー省エネルギー情報局)「Technically Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources: An Assessment of 137 Shale Formations in 41 Countries Outside the United States」
URL:http://www.eia.gov/analysis/studies/worldshalegas/pdf/overview.pdf
2.ハンガーマップ2019
国連WFP
https://ja.wfp.org/publications/hungermapjp-2019
3.各国保有の核弾道頭数
毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160528/ddm/007/030/043000c
地図ソフトジオスタジオで重ねたもの。
4.ジョンズ・ホプキンズ大学の新型コロナウイルスについての統計ページ
(2020年7月)
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
 拡大するとわかりますが、絶対値(円)を配置しているので、基図がメルカトル図法であることが直ちに不適当ということにはなりません。しかし、正積図法(に近い)図である方が好ましいことは確かです。
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