メルカトル図法では北海道は鹿児島より、本来の1.3倍拡大されている
2020年5月
 図1は地理院地図から、日本列島の一部を表したものです(沖縄は載せていません。ご容赦ください)。特に違和感はないでしょうか。なるほどこれが日本の姿だ(大きさだ)と思われるでしょうか。
図1
 図2は白地図です(ズームレベル6)。地理院地図はこうした白地図も表現できます(北海道と鹿児島は着色しています)。
図2
 しかし、ズームレベルが小さいと海岸線はつぶれてしまい、使い物にならないとまでは言いませんが、地図表現の上からは大いに問題ありです。本来は総描して、その縮尺に応じた表現に直さないといけません。このことについては、追って取り上げたいと思いますので、今はここまでにしておきます。
 さて、図の上下、北海道と鹿児島に注目してください。
 地理院地図の投影法はメルカトル図法なので、高緯度ほど拡大されます。例えば鹿児島を基準にすると、北海道は鹿児島よりどの程度拡大されているのでしょうか。次の4つの方法で検討しました。

  1.白地図を作成しピクセル数を数える。
  2.The True Size Of ...というサイトを使いピクセル数を数える。   
  3.地理院地図のスケールを使う。
  4.三角関数の計算を行う。

●白地図を作成しピクセル数を数える。
 白地図は地図ソフト「ジオスタジオ」を使いました。画面キャプチャーして両県の画像ファイルを作ります。それをある色で塗りつぶし、その色のピクセルが幾つあるかを「ピクセルカウンター」というフリーソフトで求めるのです。
 問題は塗りつぶしです。「ギンプ(ジンプ)」やウインドウズについている「ペイント」だと無料なのでよいのですが、塗り残しが出てしまいます。そこで古いですが「フォトショップエレメンツ9」の「選択範囲の塗りつぶし」の機能を使ってうまく対応することができました。
 これをピクセルカウンターで開きます。メルカトルでは79169ピクセル(図5)というように表示されます。
図3
 検討する上での基本的考え方は次の通りです。実面積において北海道が鹿児島より何倍大きいかを調べます。次にメルカトル上で、北海道が鹿児島より何倍大きいかを調べます。後者の方が大きいはずだから、その違いが、鹿児島より北海道が大きくなっていることを示すということです。実面積は、行きがかり上、サンソン図法で島嶼部を除いた「本土」「本島」のみのピクセル数を数えることにしました。
 サンソン上  北海道45017ピクセル 鹿児島3617ピクセル(図10) 12.4倍
 メルカトル上 北海道79169ピクセル 鹿児島5039ピクセル(図11) 15.7倍
  メルカトルの拡大率は、15.7÷12.4で1.3倍ということになりました。
図4 図5
 なお、国土地理院のデータ(「令和2年全国都道府県市区町村別面積調(1月1日時点)」)によれば、北海道本島は77,984平方キロメートル、鹿児島県本土は6,593平方キロメートル(県の面積9187から島面積2594を引く)です。77984÷6593=11.8倍になります。ピクセル数の計算では12.4倍ですが、許容の範囲でしょか。メルカトルの拡大率15.7÷11.9=1.3倍となるので、ピクセル数を数える方法にとりあえずは問題がないということにしたいと思います。
●The True Size Of ...というサイトを使いピクセル数を数える。
 The True Size Of ...は、メルカトル図法上で、マウスで国を移動させて、その緯度にふさわしい大きさに変化させることができるサイトです(https://thetruesize.com/)。日本を動かし、鹿児島の緯度に北海道を移動させて(小さくなります)(図6)、それぞれのピクセル数を数えて(図7)比較しようというものです。なかなか簡単な方法と言えるでしょう。
図6
図7
 正規の位置の北海道は98814ピクセル、鹿児島付近に移動した沖縄は73374ピクセル。
98814÷73374=1.3倍。上と同じ値になりました。

●地理院地図のスケールを使う方法
 地理院地図の左下にスケールが表示されています。これは中心十字線の位置(緯度)のスケールです。例えば同じ300qでも画面上の長さは上(高緯度)と下(低緯度)で異なります。札幌市と鹿児島市でのスケールの長さの違いを比較して、それを二乗すれば、面積の違いになると考えるのです。
 便宜上北海道は札幌市で、鹿児島県は鹿児島市で代表させることにしました(図8、9、
スケールを赤枠で囲っている)。
図8
図9
 具体的な計算は、画面キャプチャーしたスケールの長さのピクセル数を測ります(図10)。札幌は90ピクセル、鹿児島は78ピクセルでした。90÷78の二乗は1.3。札幌のあたりは鹿児島の約1.3倍拡大されていることになりました。これは上記2つの値と同じです。
図10
●三角関数の計算を行う。
 メルカトル図法では緯度60度では長さが2倍、面積が4倍になるということを高校の地理で教わった方もあるでしょう。緯線の拡大率は赤道では1(拡大していない)、極では無限大になります(メルカトル図法の「世界全図」がありえない理由)。拡大率は三角関数のSEC(セカンド)で求めることができます。SECは1/COSです。
 鹿児島は32度。SEC32度=1.18
札幌は43度  SEC43度=1.36
 1.36÷1.18の二乗は1.3 当然ではありますが、上記と同じ値になります。これが一番簡単な方法と言えるでしょう。
 メルカトル図法による拡大でよく例に出されるのがグリーンランドです。約17倍拡大されていると言われます。私も、ピクセルを数える方法で17倍を確認しました。塗りつぶし等にかなり苦労しましたが、SECなら瞬時です。グリーンランドの中央部の緯度は76度です。SEC76度=4.13 この二乗は17です。求めたいエリアの中央部の緯度を調べSECの値を二乗する。手間をかけず結果を求めたい時には誠に便利な方法です。
 北海道が約1.8倍拡大されていることも分かります(札幌1.36の二乗1.8。塗りつぶしやメッシュをかけて面積を求める方法でもほぼ同じ値になることを確認しています)。
参考までに、メルカトル図法の中に正積図法(サンソン図法)を入れてみました(図11)。
図11
 このように、4つの方法のいずれも同じ結果になりました。地理院地図で見る北海道は、鹿児島と比べて約1.3倍拡大されているのです。面積に関する統計データを地理院地図(白地図)やメルカトル図法の地図に掲載する際には十分注意が必要です。
 念のため、メルカトル図法(図12)と、鹿児島の拡大率に合わせて1.18倍拡大した正積円筒図法(図13、標準緯線35度22分)を並べてみました。北海道がやはり拡大されていることが一目瞭然です。
図12                        図13
 現在の地理院地図は国土面積を正しく表現できていません。システム上の大きな変更が必要になると思いますが、投影法を選択でき、正積図法による正しい国土の姿が表現できるような改訂を切に望みます。
メモ
1.フォトショップで選択範囲を決める際、北海道は「クイック選択ツール」でほとんど決定できた。鹿児島は小さいからかそれではうまくいかず、「多角形選択ツール」を利用した。
2.上記選択ツールで残った部分は、鉛筆ツールを使って塗っていたが、一見同じ色にみえても微妙に異なっており、ピクセルファインダーでは認識しない場合があるので、要注意である。選択ツールできちんと決めておくことが大切である。
3.三角関数の計算は関数付き電卓やエクセルでできるが、ネットではkeisanサイト(https://keisan.casio.jp/)の三角関数(度)が便利である。
※GISソフトがあれば瞬時にできる作業かもしれないが、手工業的方法でもこの程度はできるということで紹介する次第である。
※入院中に病室で作成したものである。不都合な点があれば病人に免じてご容赦願いたい。
※北海道本島の面積については、北海道総合政策部情報統計局統計課企画情報係より丁寧な案内を頂いた。御礼申し上げます。
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