(暫定)2020年防衛白書掲載の地図の検討
2020年7月16日
2020年7月18日加筆
PDF版より引用  2020年7月14日発表
今年版の特徴
1.昨年大幅に改善されたが(特に投影法)、課題として残されていた地図表現上の問題(海岸線が描かれていない等)も、進展が見られた。
2.投影法の観点では基本的に問題はない(地図主点を明記すべき図が1点ある)。広域を表示している地図の場合は、図法名やパラメータを何らかの形で表記するのが望ましい。
3.従来の地図を継続して使っているものがある。全体の表現が向上しているので見劣りしているものがある。地図表現の観点から再度見直しが必要である。
4.昨年も指摘したが、サハリン南部の表記に揺れが見られる。
5.不要な線が入っているなど、地図表現上適切でないものがある。
6.昨年版から加えられた「イメージ」という注は、必ずしも正確なものではないという弁解に思える。それがなくても十分通用する図もあるので、安易に「イメージ」を加えている現在のあり方は見直しが必要である。あるテレビ番組の「諸説あります」は逆に不誠実さを示しているように思える場合がある。「イメージ」はそれと同様である(昨年版においても同様の指摘をしている)。
※個人的所感
 防衛省は内部に地理・地図の専門スタッフがいるので、彼らが力を発揮すればいかに改善が図られるかというよい例である。外交を司る省庁も見習うべきである(地理・地図の専門スタッフがいなかったとしても)。
 未検討の項目があるが、とりあえず暫定版として発表する。
※注
 広域図については、地図ソフト「ジオスタジオ」などから図法名を判断し、記載した。一部未確認のものがある。ゴール平射図法が多く用いられているのが特徴である。
 ゴール図法はスコットランドの牧師ゴールが19世紀後半に発表した3つの円筒図法の総称。一般的にはその中のゴール平射図法を指す。
 1.緯線間隔は高緯度で広がるがその拡大は穏やかで極も表現できる。
 2.ミラー図法に似た形状である。
 3.正性質はもたないが、比較的歪みが小さく作図が容易なのでかつては日本でよく用いられてきた。
 4.日本ではガル図法と呼ばれてきた(これは紹介者の誤解による可能性がある)。
(説明の一部は政春『地図投影法』による)。参考サイト
2019年版の検討   2018年版の検討  2006年版の検討
p43
図法名 ゴール平射図法(かつて、ガル図法と呼ばれていたもの) 合成はp55p161参照 
  (ジオカートにより作成)
p44
図法名 未確認
p55
図法名 ゴール平射図法
図法名 ゴール平射図法
経緯線が無いので判断が難しいが、同図法が多様されていることもあり
見当をつける。経線に沿う国境線が南北の直線になっていることも判断材料。
63
図法名 北京中心の正距方位図法 地図ソフト「ジオスタジオ」と合成。一致している。
p65
図法名 ランベルト正角円錐図法 中央経線105度 標準緯線0度・60度
経線は直線なので、ランベルト正角円錐図法と見当をつける。日本やインドが中央経線に対してかなり傾いている。標準緯線の値を大きくすることで傾きも大きくなるので(試行錯誤)何度か値を変えてほぼこれでよいと判断した。
p73
いわゆる逆さ地図 画像が不鮮明だった年があるが(2018年)、今年は明瞭だ。
p76
二重になっている緯線が何本かある。これは何を意味しているのだろか。単なるミスか。
図法名 正距円筒図法(標準緯線0度) 経緯線間隔2度
 経緯線が直交しており、経緯線による区画が正方形に見えるので判断。
p90
図法名 未確認
10 p96

図法名 ピョンヤン中心の正距方位図法 地図ソフト「ジオスタジオ」と合成。一致している。
11 p116
図法名 ランベルト正角円錐図法 中央経線100度、標準緯線65度・40度
      
参考
図法名 ランベルト正角円錐図法 中央経線100度、標準緯線62度・43度
この大きさなら有意な差は見られない
      
12 p125
図法名 メルカトル図法 経緯線間隔5度
経緯線が直交、区画が縦に長いのでミラーかメルカトルのいずれかと判断。
不要な線 竹島の拡大図の中の赤枠で囲った「緯線」は何を意味しているのか不明。おそらく下図の30度の緯線を消し忘れたものと思われる。
隠岐諸島の下の線は北緯36度。もしかしたらその赤い線は北緯38度か。地理院地図と重ねてみた。近いことは近い。しかし、仮にそうだとしたら下図とは縮尺が違うわけだし、その線の意味を記す必要がある。地図表現として不親切である。そもそもこの図においては緯線は不要だ。赤枠で囲った線は、やはり消し忘れであると判断する。それにしても小うるさい指摘だ(^_^;)。
13 p143
図法名 未確認
14 p146
図法名 ミラー図法か? 継続して使われている図だが、海岸線の描画が甘い。
特にノルウェー。作り直しをして欲しい。
15 p161
16 図法名 ゴール平射図法
   
17 p196
図法名 未確認
18 p210
図法名 未確認
19 p246

海上保安庁の「領海・排他的経済水域について」のページの図と同じかと思ったらそうではなかった。合成しても一致ちない。
図法名 ランベルト正角円錐図法と判断。微かに見える経線から円錐図法であることは確か。排他的経済水域の境界線が正円のようなので、正角図法。ぴったりの結果を得ることができていないが、とりあえず中央経線135度、標準緯線0度、40度の合成図を掲載。
20 p249
図法名 正距円筒図法 標準緯線を北緯35度にしてみた。ズレはあるが、何とか許容の範囲?
 正距円筒であることは間違いないだろう。
21
図法名 未確認
22 p254
図法名 ランベルト正角円錐図法 中央経線128度 標準緯線30度、20度 経緯線は5度間隔
23 p294
図法名 未確認
24 p321
25

26 p322
図法名 正距円錐図法 中央経線142度 標準緯線45度、20度 経緯線10度間隔 約2度回転
緯線間隔が等しいので、正距円錐図法と考えた。そのままでは一致しないので、約2度回転させる便法をとった。
27 p323
図法名 正距円錐図法 中央経線142度 標準緯線45度、20度 経緯線10度間隔 2度程度回転
ランベルト正角円錐図法として考えていたが、緯線間隔が等しいので、正距円錐図法に訂正した。上記パラメータで作成したところ、ズレが生じたので、約2度方位を振ったのが下の図である。p322と同じ。
参考 ランベルト正角円錐図法 中央経線148度 標準緯線30度、20度
ちょっとズレがある
28
29 p324
30 p326
31 p331
32 p333
33 p335
正距方位図法であるが、図の中心が明記していない。那覇としてジオスタジオで作図。
結果はほぼ一致した。昨年は「普天間基地を視点(中心)として考察する。」とした。
来年は、中心(地図主点)を明記して欲しい。
★サハリンの区別なし
34 p336
図法名 未確認
35 p337
以下は昨年のもの。
「陸部と水部の区別がつかず、横浜市、逗子市、横須賀市が違和感のある表現になっている。」と書いたが、改善されている。
36 p344
図法名 ゴール平射図法
下は昨年の例。「アフリカや南米など交流がない(少ない)地域はグレーとなっており、水部との違いがあまりない。そのため、
海岸を認識することが難しくなり、違和感のある表現になっている。」と書いた。残念ながら今年も同じである。
37 p345
図法名 ゴール平射図法
ゴール平射図法が多用されていることから見当をつけた。
                   
38 p381
図法名 ゴール平射図法
ゴール平射図法が多用されていることから見当をつけた。
39 p386
40 p387
図法名 ゴール平射図法
41 p396
42 p448
図法名 ゴール平射図法
43 p589 (592ページまで続くがそれは省略)
図法名 ロビンソン図法
念のため全図 一致する
参考 イコール・アース図法
天地方向にずれが生じる
参考 イコール・アース図法。ジオスタジオとジオカートの合成。当然一致する。
 図法名の確認にあたっては「ジオスタジオ」「ジオカート」の作者の協力を得た。感謝申し上げます。
田代博のホームページ