防衛白書2019年版
「南西諸島における主要部隊配備状況(イメージ)」の検討
2019年10月22日
10月23日追記
防衛白書2019年版、図表V−1−2−7「南西諸島における主要部隊配備状況(イメージ)」に、地図投影法の視点から看過できない問題点があるので、その検討を行う。
結論:理由は不明だが、「同縮尺の本州」が明らかにずれて配置されている。
 
図表V−1−2−7「南西諸島における主要部隊配備状況(イメージ)」
紫色の本州について、今年版には「同縮尺の本州」という注記が入った。昨年版についてはそれがなく、次のコメントをした。
本州を重ねているのは、距離をイメージする上で悪い表現ではないが、一応、断る必要がある。なお、こうした表現をするには厳密には図法の検討も必要である」。
「距離をイメージする上で」と書いたが、実は地図上で任意の方向の距離を正確に求めるのは困難である。距離を正しく表現できるのは「正距図法」だが、それは特定の方向だけに限られるからだ(多くの場合は経線方向。正距方位図法などの場合は、中心からのみ))。スケールバーが示してあっても、その通りに表現されるのはごく一部だけである(特に、横方向=緯線方向。緯線が実長になるのはサンソン図法だけなので、それ以外の図法の場合、スケールを添えていても、その通りになる場所はごく僅かである。スケールバーはまさにイメージなのである)。
本州という広がりをもった空間を移動させるわけだから、投影法的に正しく配置する必要がある。具体的には、ベースになる地図の投影法に合わせなければならないということである。仮にベースがメルカトル図法であれば、本州を南下(低緯度に移動)させるので、実際よりも小さくしなければならない(メルカトル図法は高緯度ほど拡大されている)。
これはなかなか大変な作業であるが、今は、それを簡単に行えるサイトがある。「The true size of ...」である。メルカトル図法上で、国を選んで、任意の場所に移動させることができるのである。当然緯度に応じて大きさは変化する。以下がその画像である。
これを、図表V−1−2−7に重ねたのが下の図である。
赤の海岸線(杭州湾、台湾、屋久島・種子島)を基準に合わせてみたものである。ベース図は厳密には一致しないが、それほど大きな違いはないと言えよう。
問題は、本州である。防衛省の地図は明らかに東側にずれている。
本州がこのような位置関係になる投影法があるのか試行錯誤して選んでみた(ジオスタジオ使用)。正積円筒図法(標準緯線30度)の場合、多少それらしくなるがズレが無視できない大きさになる(比較をする際に正積円筒図法は、作業の上からも意味のある図法ではある)。
となると考えられることは合成である。2種類の地図を重ね合わせたということである。具体的には上記のThe true size of ..の図を回転させるのである。
そうすると、件の地図とほぼ一致したものになる。
地図投影法ソフトの作者に相談したところ、横メルカトル図法で作成し、若干の調整を行うと完全に一致する地図を作成できるというアドバイスを得た。その地図が以下である(ダンストリビ氏提供)。確かに見事に一致している。
防衛省が、果たして横メルカトル図法を用いたのかわからないが、2つの地図を合成して、図表V−1−2−7を作成したことは間違いないだろう。

一体何故このような面倒なことをしたのか、どのような意図でこのような操作をしたのか大きな疑問である(地図投影法的視点からは)。
10月23日追記
 上記とは異なる図法による2つの地図を用いて作成したものであることがわかりました。現時点ではそのことのみ記します。
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