イージス・アショア問題
山口の巻
2019年6月20日
2019年6月21日加筆
2019年6月19日20時配信の朝日の記事です。
2019年6月20日 紙面
山口県の「西台」の標高の違いが話題になっています。国土地理院の地図では574m、それがグーグルアースでは576m。秋田と違い、今回はグーグルアースの方が高くなっているというのです。
しかし、実はそう簡単な話ではないようです
まずは、該当の地域を地理院地図で見てみましょう。
標高点571mの東側約300mの地点(十字)に574mがあります。そこが最高点のようです。
一方、防衛省の資料では次のようになっています。確かに西台576mとなっています。
しかし、ここが最高地点ではありません。断面図のとり方によって(グーグルアースは断面図を作らないと、高さがわかりません)、もっと高い場所もあるのです。
拡大しました。581mがわかると思います。しかも、この付近にはもっと高いポイントもあるのです。
(参考)山のアイコンをクリックすると、この山(Abu)についての説明が表示されます。
さらに重大な問題が!
この付近の東西方向の断面図をご覧ください。赤線の部分です。
サイズは合わせていませんが、なだらかに東側が高くなっていることがわかります(ほぼ水平ですが)。
グーグルアースによる断面図をご覧ください。同じ範囲です。例によって垂直方向は拡大しています。
矢印の箇所で段差があります!これは何故でしょうか?
グーグルアースの標高は、樹高などをそのまま読み取っているからです。国土地理院の地形図、地図データはもちろん、樹高を考慮していません。地表面の高さです。それが基本です。
レーダー照射を考えるには、樹高を考慮した方がよいのかもしれませんが、一般的に測量では地表面(地盤)の高さで考えます。
東京臨海部の例を末尾に載せました(建物の高さが加わっていることがわかります)。
両者の違いについては、以下の国土地理院の解説をご覧ください。
国土地理院中部地方測量部「測量のミニ知識」より
このような建物や樹木を含んだ地球表面の高さのモデルを数値表層モデル、通称DSM(Digital Surface Model)といい、これが「オリジナルデータ」にあたります(図−5)。
図−5 最初に計測した地表の高さ(赤い太線
一般の地図のように地盤の高さを求めたい場合には、オリジナルデータから建物や樹木等の高さを取り除くことが必要です。この建物や樹木の高さを取り除く作業を「フィルタリング」といいます。
 フィルタリングを行って得た地盤の高さのモデルを数値標高モデル、通称DEM(Digital Elevation Model)といい、これが「グラウンドデータ」にあたります(図−6)。
図−6 樹木や建物の高さを取り除いた地盤の高さ(赤い太線
使用目的によりますが、測量にかかわる重要な作業を行うには、国土地理院の地形図、あるいはインターネットで配信されている地理院地図を用いるべきと思います。それは国の機関が精度を保証したものだからです。地理院地図の場合、「標高タイルの作成方法と地理院地図で表示される標高値について」というページもあります。グーグルアースは便利ですし、きちんとした根拠にもとづいて作らているものではありますが、データソースをすぐに知ることはできません。

西台について。
国土地理院の地図では、標高点では571mですが、その東に574mの場所があります。ここが最高点です。グーグルアースでは576mが最高点とのことですが、実は疑問です。断面図の取り方によっては付近にもっと高い場所がたくさんあるからです。例えば山頂をしめすポイントがありますが、そこを通る断面図を作ると581mになります。しかもその付近にはもっと高いところもあります。グーグルアースの標高は、樹高、木の高さを除外していないようです。
国土地理院の地図の標高は地表面の高さで、樹高は考慮していません。どこも全部そうです。
使用目的にもよりますが、こういうデリケートな問題で、今回あえて国土地理院の地図ではなく、グーグルアースを使って作業をしたということは、その理由を明確にしないと、信頼性の点で問題があるのではないかと思います。

まとめ
1.西台の最高地点は、グーグルアースによれば防衛省のいう576mではない。「山頂」のアイコンの位置は581mであり、もっと高いポイントもある。
2.グーグルアースの標高は、樹高を加味したもののようである。標高は通常は地表面の値である。標高データの性質が根本的に違うものを使っている(未確認ではある)。
3.「断面図」は複数箇所で作成すべきだろう。
4.国土地理院の地図データを用いるべきである。もし今回、あえてそうしなかったのなら理由を明らかにすべきである。
(参考)東京臨海部の断面図のグーグルアースと地理院地図との違い
グーグルアースによる断面図がこの地域では樹木ではなく、建物を加味していることがわかります。
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