グーグルアースと国土地理院の地図とでは、標高の基準が違う!
イージス・アショアを巡る重大な問題
2019年6月29日
7月1日加筆
イージス・アショア問題が収束しません。山口県の「むつみ演習場」に関わって、北側にある「西台」の標高の違いが話題になっています。国土地理院の地図では574m、それがグーグルアースでは576mになっているというのです。
「朝日新聞」2019年6月20日
該当の地域を地理院地図で見てみましょう。
高点571mの東側約300mの地点(十字)に574mがあります。そこが最高点のようです。
一方、防衛省の資料では次のようになっています。確かに西台576mとなっています。
しかし、ここが最高地点ではありません。断面図のとり方によって(グーグルアースは断面図を作らないと、高さがわかりません)、もっと高い場所もあるのです。
拡大しました。581mがわかると思います。しかも、この付近にはもっと高いポイントもあるのです。
(参考)山のアイコンをクリックすると、この山(Abu)についての説明が表示されます。
防衛省は2018年に以下の資料を作っていました。
上記、北朝鮮西端方向に近い断面図をグーグルアースで作成してみました。
最高地点は588mになりました。
この際、「しらみつぶし作戦」! 色々な方向で断面図を作成し、最高点を探してみました。
現時点では588mより高い地点は見つけることはできませんでした。
上で述べていたように、最高点は576mでないことは確かです
ところで重大な問題が!
グーグルアースの標高は、樹高などをそのまま読み取っているのです。国土地理院の地形図、地図データはもちろん、樹高を考慮していません。樹木や建物の高さを除いた地盤の高さです。それが基本です。レーダー照射を考えるには、樹高を考慮した方がよいのかもしれませんが、一般的に測量では盤の高さで考えます。両者の違いについては、以下の国土地理院の解説をご覧ください。
具体例として、東京臨海部を参考3に載せました(建物の高さが加わっていることがわかります)。
国土地理院中部地方測量部「測量のミニ知識」より
このような建物や樹木を含んだ地球表面の高さのモデルを数値表層モデル、通称DSM(Digital Surface Model)といい、これが「オリジナルデータ」にあたります(図−5)。
図−5 最初に計測した地表の高さ(赤い太線
一般の地図のように地盤の高さを求めたい場合には、オリジナルデータから建物や樹木等の高さを取り除くことが必要です。この建物や樹木の高さを取り除く作業を「フィルタリング」といいます。
 フィルタリングを行って得た地盤の高さのモデルを数値標高モデル、通称DEM(Digital Elevation Model)といい、これが「グラウンドデータ」にあたります(図−6)。
図−6 樹木や建物の高さを取り除いた地盤の高さ(赤い太線
上記とほぼ同じ範囲を国土地理院のデータを使用する地図ソフト「カシミール3D」で作成してみました。
樹高を考慮していないので、最高地点は約567mとなりました。
 
ちなみに、断面図のラインは、標高点571m(写真では▲西台)と、地理院地図では最高点の574m地点の間を通っています。
違いがわかりやすいように、グーグルアースの断面図とカシミール3Dの断面図を成しました。
薄い赤のグーグルアースの断面図が概ね高くなっていることがわかります。
国土地理院のデータとグーグルアースでは、ほぼ同一地域の断面図において最高点が20m以上違う結果となっています。両者の標高データは、性質が異なるものなのです。その違いを防衛省は認識していたのでしょうか。
防衛大臣は、6月25日の記者会見で「グーグル・アースそのものは、最新の衛星データ等が反映されている正確なものだと認識をしております」と答えたそうです。グーグルアースの標高データの特性を踏まえた上での発言だったのでしょうか。
さらに言えば、国土地理院は標高データの精度について明示しています(「標高タイルの作成方法と地理院地図で表示される標高値について」)。グーグルアースについてはその精度を知ることができません。
レーダー照射の問題を考えるにはどちらのデータを使うべきなのか、またグーグルアースの方がよいとするならば精度の保証をどのように確認するのか、住民が納得できる説明が必要ではないでしょうか。
7月1日加筆
「しんぶん赤旗」にコメントが紹介されました。
参考
カシミール3Dには「樹高の影響を加味する(地面を上昇させる)」機能があります。
標高を20m高くして断面図を作成したのが以下です。
最高地点は確かに587mになっています。
参考2
AXAが提供する陸域観測技術衛星ALOSデジタル3D地形データ(30mメッシュデータ)によりカシミール3Dで作成。
これは人工物などを除去していないので、「高く」見えます。最高地点は約600mになります。
グーグルアースよりも高くなります。当たり前のことですが、使用するデータの性質を考慮する必要性があります。
参考3
東京臨海部の断面図のグーグルアースと地理院地図との違い
グーグルアースによる断面図がこの地域では樹木ではなく、建物を加味していることがわかります。
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