イージス・アショア問題対応の経過(メモ)
2019年6月13日
2019年6月19日加筆
 イージス・アショアの候補地選定のための防衛省資料にミスがあった問題で、6月6日から1週間ほどメディア対応に追われました。「地図学習の教材」として使える内容もあるので、日付順に経過を記します。今後必要に応じて加筆します。あくまでも私的なメモです。
6月6日
 2019年6月6日、NHKニュースウオッチ9のディレクター氏からの連絡が出発点でした。
 内容は、防衛省の資料が仰角を過大に考えていた。なぜそうしたミスが起こったのか、考えを聞かせて欲しいというものでした。
 当日は、「くらしと測量・地図展」(新宿西口)の講演の日にあたっており、非常に忙しくしていました。新聞記事で、地図に関わる問題だとは思っていましたが、じっくり読む余裕はなく、「関心はありますが、内容が内容だけに地図を使いしっかり確認しないとうかつなことは申せません。4時に講演は終わりますが、会場案内などの仕事もあり、時間的に非常に厳しいと思います。興味はあるのですが・・・・」という消極的な返事をしました。
 講演終了後、情報を集め、調べてみると、極めて単純な誤りであることがわかりました。断面図の垂直方向を拡大していただけなのです。断面図を作成する時は、垂直方向を拡大するのは基本です。縮尺は水平方向と垂直方向が異なることになります。防衛省は「縮尺を間違えた」と言っているので、話は合います。
 そのことをディレクター氏に伝え、新宿から渋谷へ向かい、局で取材を受けることになりました。
 その時点では、何を用いて断面図を作成したかははっきりしていませんでした。
 局では、パソコンにカシミール3D(スーパー地形)をインストールしてもらい、垂直方向を4倍に拡大した断面図と正しい(1倍)の断面図の2種類を作製。それを見ながらコメントを述べました(下の図は、後日自宅で作成したもの)です)。
(4倍)
(1倍)
 その内容が、早速その夜の「ニュースウオッチ9」で放送されました。
 幸い、わかりやすかったという評価をいただきました。
6月7日
 NHK「おはよう日本」でも、上記内容の一部が放送されました。
 この後発言が段々「過激」になっていくようです(^_^;)。
■朝日新聞秋田総局より電話、メール

 断面図はグーグルアースではないかと思うが、どうだろうか、また、こうした「初歩的なミス」(防衛省幹部も発言)起きたことについてどう考えるか、意見を聞きたいという電話がありました。グーグルアース画像や防衛省資料が添付してあり、後者は、初めて「実物」を見ました(下の画像はオリジナルよりキャプチャー)。
 電話で話し、メールでも送った内容が翌日の記事に反映されました。
(「朝日新聞秋田版」 2019年6月8日)
■秋田魁新報より電話取材
 今回の事態のきっかけを作った秋田魁新報より同様の問い合わせがありました。踏み込んだ質問もあったのでそれに応じた回答をしました。やはり翌日掲載されました。

(「秋田魁新報」2019年6月8日)
6月9日
■テレビ朝日
 取材依頼の電話があり、局へ行きコメント。2つの番組からの同時取材でした。  
 以下の点を強調しました。
 グーグルアースは簡単な操作で断面図を作成でき、その断面図は地図(空中写真)とも連動しており、便利ではある。
 ただし、ピンポイントで地点を選ぶことは難しく、精密な測量に用いるには必ずしも適切ではない。現に、秋田の本山の標高は防衛省の資料では712mとなっているが、山頂の標高は実際には715mである。これは許容できる誤差の範囲とは言えようが、精度の点で問題がある象徴的な例と言えよう。
 こうした作業で使うべき地図は、精度が保証された、国家機関が作製している国土地理院の地形図、地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)である。地理院地図はネットで配信されているウェブ地図であり、もちろん断面図も描くことができる(垂直方向の縮尺はもちろん拡大されている)。
 今回は、どのような地図を用いるべきかという地図選択においても大きな誤りがあったと言える。

テレビ朝日「サンデーステーション」
   6月9日放送、電話取材の音声で出演
6月10日
昨晩の取材分が放送されました。

「グッド!モーニング」

「羽鳥慎一モーニングショー」
これはフリートーク的な場での発言で、この部分が使われるとは思いませんでした。発言したことは間違いありませんが(^_^;)。
※関西のテレビ朝日系列局より電話(サンデーステーション?のを使う旨の確認)
■TBSテレビから取材依頼。局へ行きコメント
 今回も2つの番組の同時取材でした(「NEWS23」と「ひるおび!」)。別々に依頼がありました。同じ局でも独自に動いているのですね。その間、別の局から問合せがあり、混戦するほどでした(^_^;)。
 国土地理院の地図を使うべきという点に力点をおいてコメントするようにしたので、その部分を使う番組もでてきました。

「NEWS23」
  取材日の夜(6月10日)放送
 こちらはまだ、断面図のミスを使っています。但し、垂直方向に拡大することは「超超超超基本です」と言った部分は受けたようです。
■日本テレビから電話取材(「news zero」)。
 顔写真を送りました。当日放送されました。

「news zero」
 「正確な断面図」というのは、国土地理院の地図(地理院地図)を念頭においています。但し、地理院地図の断面図は、この場合は、約10倍に拡大されています。
6月11日
「ひるおび!」放送。
 私のコメントはおもにパネルになって紹介されましたが、秋田魁新報のスクープの紹介から始まり、時間をとって、なかなか丁寧な説明になっていたようです。目立ちませんでしたが、このために作成したカシミール画像も紹介されていました。
ここでも超超超基本が使われており(前より一つ少ないですが)、コメンテーターには受けていました。
 クレジットに赤枠を付けました。

文化放送から電話取材
「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」
 6月11日放送 しゃべった内容がほぼそのまま流れました。
(6月13日現材のURL http://www.joqr.co.jp/sakidori/page.html)

6月15日
TBS「上田晋也のサタデージャーナル」 でTBSで収録・放送した内容が使われました。こちら
TBSでの再利用が少なくとももう一件あります。
「地図学習教材」として

1.断面図の意義・作成法に関して
*垂直方向を拡大するのは基本ですが、それが認識されていません。
*垂直方向と水平方向の縮尺が異なりますが、そのことを正しく理解していないのではないかと思うメディアの記事もあります。例えば「東京新聞」6月8日の「地上イージス調査ミス」の記事がそうです。こちらをご覧ください。
     http://yamao.lolipop.jp/map/2019/06/tokyo.htm

2.仰角の計算について
*垂直方向が拡大された断面図をプリントアウトして、定規と分度器で角度(仰角)をはかるというアナログ的手法をとったのは何ともですが、説明では、値を計算式に入れたとも言っています。縦、横の値を入れればタンジェントで求まるので、計算式と 仰々しく言うほどのものではありません(計算式であることに間違いはありませんが)。その際に入れる値が、図上での測定値であったわけですが、地図上から読み取った実測値を「計算式」に入れれば、正確な仰角がすぐに出ます。そのことに思い至らなかったのはなぜでしょうか。
*仰角(角度)を求めることができるサイト
  https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228774
 2つの数値を入れるだけで瞬時に角度が求まります。

3.グーグルアースの使用について
*簡便に使えるソフトです。この使用が直ちに問題があるわけではありません。
  垂直方向、水平方向に標高、距離も表示されます。それから「計算式」に入力できる数値も読み取れます。適切な使い方ができなかったのが根本的な問題です。
*ただし、地形図のように地名が明示されるわけではなく、ピンポイントの操作には神経を使います。
 今回の「本山」はグーグルアースにも山の印がついているので判断はできますが、地形図などと見比べなければなりません。国土地理院の地理院地図と比較すれば差は歴然です。また防衛省の報告書では本山の標高は712mとなっています。
  しかし、実際は715mです。三角点もあります。今回の仰角計算には影響はありませんが、データの精度の違いを象徴しているのではないでしょうか。
(参考)グーグルアースで断面図を作る方法について書いてあるサイトの一つ
   http://googleearth666.kagennotuki.com/extension-8.html
4.国土地理院の地形図または地理院地図の利用を!
*今回のような厳密な結果が必要とされるような場合には、精度が保証された国土地理院の地図データを用いるべきです。ウェブ地図として配信されている地理院地図を使えば作業は楽です。断面図も作成できます。ただし、現時点では地理院地図の断面図は、作成条件によりますが、垂直方向にかなり拡大されています。図の場合は約10倍になっています(これがデフォルトというわけではありませんが)。バーで「縦軸の長さ」を調整できますが、同1縮尺(1倍)にすることは極めて困難です。
*フリーソフトでも、カシミール3Dは地理院の地図データを利用して、同一縮尺の断  面図を簡単に作ることができます。「ひるおび!」の項で示した通りです。
防衛大臣の記者会見(6月11日)では次のようなやりとりがされています。
Q:データの関係では、今回、グーグル・アースを使用したとのことですが、グーグル・アースを使ってもう一度確認をするのでしょうか。若しくは、別の手法を 使ってとのことでしょうか。
A:再計算に当たりましては、実際の地図を用いて計算をやり直しました。グーグル ・アースを用いたことが適切でなかったとは考えておりませんが、縦軸、横軸の 縮尺が違うということを見落として計算をしたということはあってはならないミ スだったと思っております。再計算に当たりましては、実際の地図を用いて計算 を行ったところでございます。
 この「実際の地図」というのは国土地理院の地形図または地理院地図をさしているの  でしょう。グーグルアースは「実際の地図」ではなかったということになります(^_^;)。
5.再発防止に向けて
*今回の「あってはならないミス」が何故起こったのか、担当職員の「地図力」の徹底  的な調査を求めたいところです。断面図の基本について、たまたまうっかりしていた  のか、全く知らなかったのか、また仰角の出し方について、どのような数値を入れれば良いのかを知らなかったのか、更に、地理院地図の存在についてはどうだったのか。
*高校で地理が必修から外れたことが、地理・地図についての基礎的な教養の習得を十分なものしていなかったとすれば、教育分野でも再考しなければならない課題になります。2022年度から高校では「地理総合」が必修になります。その中でGISは柱の一つになっています。
 今回の事態は、それに向けての良い「反面教材」を提供してくれたと言えるのではないでしょうか。


 メディア、特にテレビの報道姿勢についても思うことがありますが、本題とははずれるので、ここでは記しません。

      
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