外務省の国を説明するサイトの地図の問題点
2015年4月 
 
 外務省の国を説明するサイトに、その国の位置関係を示す地図が添えてあります。基本は正方形で、縦横312ピクセルになっています(ロシアは横が長く、チリは縦が少し長くなっています)
おおよその配置を知らせるためのもので、目くじらを立てる必要はないのですが、それでも地図学の観点からは看過できな問題があります。その幾つかを記します。

●方位がおかしい例 
まずは例をご覧ください。
グルジア(ジョージア) 
違和感がある地図です。北ではなく北西方向が上に来ているからです。
地図ソフト「ジオスタジオ」で描いたのが下の地図です(ミラー図法で描画)
 
ウクライナ
 
ここも同様です。 
ジオスタジオによる描画(ミラー図法)
 
他の国を挙げましょう。
モルドバ 
 
アルメニア 
 
 トルコ
 
地図でまとめると次のようになります(総括図)。 
 
 地図の約束では、断りのない時は北を上にして表現するのが原則です。もちろんケースバイケースで、常に北を上にする必要はありません。しかし、今回のような場合は、斜めにする必要性はないので、北が上になるような「普通の」地図で十分です。
もし何らかの事情で向きを変える必要があるなら(その理由は思い当たりませんが)、北がどちらになるかという方位記号を添えるべきです。
 
 さて、上記総括図では、外務省の地図と似た向きになるように、図法を選んでみました。ランベルト正積円錐図法です(外務省の地図がこれで描かれているかどうかはわかりません)
横に長いロシアを円錐図法の系統で描くと、周辺部は斜めを向くようになります(もちろん、中央経線の取り方によります)。上記5つの国はまさしくそうなっています。 
 
このスペースに収めるので、地図が小さくなりますが、次の図で 周辺部(左側)が斜めになっているというイメージがつかめると思います(中央経線100度、標準緯線60度)。 
 
地図が斜めになった理由の推察は以上です。何か理由があったのかもしれません。
しかし、地図学の立場からは非常におかしい、違和感のある地図表現です。
「普通の」北が上を向いた地図に改めて頂くよう要望します。 
 
なお、そのロシアは実は円筒図法の系統で描かれていますので、何ともではあります(^_^;)(縮小してあります)。 
 
ちなみに、隣のアゼルバイジャンは正位置になっています。
アゼルバイジャン 
 
 
縮尺、位置関係が考慮されていない例 
アメリカ 
 
 領土が飛んでいる場合には「切図」にせざるをえず、なかなか難しいですが、グアムをこんなに大きくする必要があるでしょうか。 同一縮尺にしたら見えなくなってしまう?ので拡大することはありますが、それでも限度というものがあります。外務省はグアムに特別な思い入れがあるのでしょうか(^_^;)。
グアムの面積は約550ku、アメリカ本土48州は約800万kuです。本土は1万4500倍以上大きい存在です。
この地図ではどうでしょうか。ピクセル数をカウントしてみました(それができるソフトがあります)。グアムは1285ピクセル、本土48州は9583ピクセル。7.5倍大きいだけです。2000倍近くも大きく表現されていることになります(我ながらヒマですね(^_^;))
 
 さらに、ハワイが左上にくるのも違和感があります。 
 
正方形に収めたいという縛りがあるのでしょうが、アメリカ48州、カナダ、アラスカをつなげ、メキシコを切る形で、グアムとハワイを入れれば、十分収まるのではないでしょうか。
 
中国、台湾の表現 
まずは2つの地図をご覧ください。 
中国 
 
台湾 
 
 
他の国については、明示はしていませんが、色を変えることによりその国の領域がわかるようになっていました。
しかし、中国と台湾については、色が変えてありません。いわば一般図が示してあるだけです。 
 
日中共同声明、第二項、第三項の精神からして、このような表現が適切なのか疑問のあるところです。 
念のため第二項 
日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。 
第三項 
中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。 
 
●単純な書き損じ
ウルグアイ 
 
赤丸をつけた箇所をご覧ください。国境線が描いてありません。ウルグアイ川がアルゼンチンとの国境になっており、ここは川幅が狭くなっているところのようです。
しかし、ここに描いてあるのは、川ではないのですから、狭くても太くても関係ありません。しっかり線を引かなければなりません。

教科書検定では十分チェックの対象になるのではないでしょうか(^_^;)。 
 
 
 
以上、「グルジア」の地図が傾いていることをきっかけに、これはおかしいぞと思うことが色々出てきたので、十分整理することなく、書き連ねました。

外国の資料を調べる時に、外務省のサイトは基本になるところです。
いい加減な表現は国際紛争にもつながりかねません。細心の注意を払い、正しくわかりやすい地図表現を心がけて欲しいと思います。


勘違いやミスがあるかと思います。ご指摘いただければ幸いです。 
 
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