東京から見る富士山の八つの特徴
2011年12月

 東京から見る富士山には八つの特徴があります。何故八つなのか。富士は24なので、2×4=8。しかも8は漢字で書けば八で、富士山の形にそっくりです。末広がりの八は日本人にとっては縁起の良い数です。ということで、八つに整理することにしました。ちなみに8を90°回転させると∞になります。無限大の記号ですね。末広がりは無限大!数学的にも意味のあることだったのです(というのは全くのギャグです。∞の由来については、例えばこちらをご覧ください)。

一つ
 一番高い富士山(その国の最高峰)を首都から眺めることができる。
 「ひとつ」は「いち」。首都からその国の最高峰が眺められる国は世界196か国の中でも僅かしかありません。日本以外には、イエメン、イラン、アルメニア、東ティモール、ソロモン諸島、アンドラ、カーボベルデ、コモロ、ブルンジ、赤道ギニアです(日本を含め11か国)。
 しかし、富士山のように、年間数十日も実際に見え、絵に描かれ、写真に撮られ、見える日数を記録を記録されるなど、人びとの関心を集めている最高峰を持つ国は日本しかありません。

二つ
 富士見坂に代表される富士見地名
 「ふたつ」は「ふじみざか」。東京には富士見地名が沢山あります。。山手線内に18(16という説も)、山手線外23区内には5つ(田代による認定)、合計23の富士見坂があります。富士山のお膝元の山梨県や静岡県より遙かに多く存在しています。
 これについては、人文地理学会の会長もつとめた故足利健亮さんが、ユニークな仮説を提唱されていました。徳川家康が江戸に幕府を開いたのは「富士山が見えるところだから」というのです。確かに江戸城には富士見櫓もあります。では家康は何故富士山が見えることにこだわったのでしょうか。それは、「富士見」が「不死身」に通じるからというのです。言葉遊びのように思えますが、武士にとって不死身は理想だからです(足利健亮『景観から歴史を読む』(NHKライブラリー1998年))。
 今も見える富士見坂は山手線内に2、線外には2つしかありません。特に一番代表的な西日暮里の富士見坂が新たな危機を迎えています。歴史的文化的価値を持つ東京の富士見坂をこれ以上「富士見えず坂」「かつては富士見えた坂」にしてはなりません。 

(別バージョン)
 二回、朝と夕方に見るチャンスがある。
 「ふたつ」は「に」で「にかい」(2回)です。富士山の東側にある東京からは、朝と夕方の2回、富士山を見るチャンスがあります。朝は順光の下で、夕方は、シルエットになる富士山を眺めることができます。富士山の西側の地域からは、展望する上で条件のよい朝は逆光になってしまいます。夕方のシルエットはあり得ません。
 朝良く見えた富士山も、昼間になると空気中の水蒸気が多くなり見えなくなり、しかし、夕方日没時にはシルエットの富士山が現れてきます。

三つ
 サンセット時にはダイヤモンド富士。
 「みっつ」は「さん」ですね。従ってサンセットとこじつけて・・・。もう説明する必要はないでしょうが、ダイヤモンド富士とは、富士山頂に太陽がかかった状態のことです。キラリと光らなくても、太陽と富士山が一緒になっていればダイヤモンド富士です。
 富士山の東側にある地域では沈むダイヤになります。夕方なので、仕事のある人にも撮影に行ける可能性があります。職場から眺めることもできるでしょう。
 23区では年に2回チャンスがあります。10月後半から11月一杯が「秋ダイヤ」。冬至を過ぎてまた戻ってくるのが1月中旬から2月一杯の「冬ダイヤ」。幻想的なダイヤモンド富士を是非ご覧になってください。

四つ
 車窓や、高層ビル、タワーからの都会ならではの展望。
 「よっつ」は「よん」「し」で「しゃそう」につなげます。電車などからの車窓富士です。ゆりかもめは、ビルの間から富士山が右に左に見え隠れします。日暮里舎人ライナーは、ほぼ南北に走っているので、左or右窓からよく見えます。多摩モノレールも、窓が大きく展望路線です。高架の効果は抜群です。各地にある高層ビルなど建物からの展望は都会ならではの特徴です。タワーや観覧車からも楽しめます。人工物との組み合わせの妙が大都会東京からの富士山の特徴です。人工物だから「じ」→「し」、四番目にふさわしいですね(^_^)。

五つ
 移動する富士。見る場所により、手前に来る丹沢山地との関係が変化する。
 「いつつ」は「い」の字をとり、移動です。東京から西に見える横に長い山が丹沢山地です。東京南部の羽田空港からは丹沢山地の左を区切る大山の上に富士山が現れます。北部の練馬区役所からは丹沢山地の右端の大室山に左上に来ます。まるで丹沢山地の上を移動するかのようです。各地からの様子は、「東京から見る富士山と丹沢山地との関係」のページをご覧ください。

六つ
 路上富士! 都会においてあえて地上からの富士山を眺める
 「むっつ」は「ろく」。「ろじょう」ということで「路上富士」。今私が力を注いでいる一つです。東京23区内の路上から見える富士山です。上記四つと矛盾するようですが、都会から高層ビルなどに上がれば見えるのは当たり前です。そういう時代だからこそ、あえて自然のままの状態で、地上から、路上から見てみたいのです。その気になって探せば都心部からもポイントがあるものです。そもそも地形的には東京は山の手も下町も大半の場所から富士山が望めるのです(山手線内外可視マップはこちら)。邪魔をするのは建物と樹木です。従って,葉っぱの落ちる冬場が、気象条件ももちろんですが、路上富士観察にとっては絶好の季節です。場所によっては、葉っぱがあってもその先に白い富士山が顔を出す時もあります。
 ご自宅や勤め先、学校のそばにもポイントがあるかもしれませんよ。
 なお、路上富士については、こちらでまとめています。

七つ
 長い歴史を持つ富士山展望
 「ななつ」は「ながい」に続けます。東京からの富士山は、江戸時代にまで遡ります。
 北斎や広重に代表されるように、江戸時代には多くの浮世絵師が江戸から見た富士山を描いています(葛飾北斎『冨嶽三十六景』『富嶽百景』、歌川広重『名所江戸百景』『富士三十六景』など)。江戸の人々にとって、富士山は無くてはならない存在であり、それが数多くの美術作品が生まれる背景でもあったのです。
 また、富士講や富士塚も江戸時代から人々を引きつけてきました。

八つ
 優しい富士山の姿は借景に最適
 「やっつ」は「やさしい」になります。目に優しいその姿は東京から見る富士山の特徴の一つです。日本の最高峰3776mも、約100q離れれば、見上げるような険しさはなくなります。仰角は2度もありませんから自然な状態で目に入ります。現在では路上からはそれが困難になってきましたが、遠くを眺めやれば八の字に裾野を広げた穏やかな姿が目に入る(入っていた)のです。上記浮世絵を見れば、それが借景としても使われてきたことがよくわかります。


 眺める、という点だけでもこれほど多くの特徴を持つ東京からの富士山をこれ以上損ねないように、景観についての関心を高める必要があると思います。生活者の視点で、行政の立場で、そして私自身について言えば地理教育の場で、景観をテーマに何ができるか、考えていきたいと思います。

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