東京都から見る富士山(原稿・工事中)
最南端は八丈島から
2011年3月
 東京都は、多摩の山岳地域以外は可視域です。地形的な障害は僅かしかありません。下町の方でも地形的にはよく見えます。遮っているのは建物です。多摩地域ではもちろん地形的に稜線部からしか見えません。島嶼部からもよく見えます。緯度的に最南端は東京都の八丈島なのです。
 東京からは富士山がよく見えます。徳川家康が江戸に幕府を開いたのは富士山が見えるからだ、という説があるほどです(足利健亮『景観から歴史を読む』NHKライブラリー)現在も皇居に富士見櫓(やぐら)が残っています。では家康は何故富士山が見えることにこだわったのでしょうか。それは、「富士見」が「不死身」に通じるからです。言葉遊びのように思えますが、武士にとって不死身が理想だったからです。富士見地名が東京に多いゆえんです。
 武蔵野市にある成蹊学園では、1963年から毎日富士山などの視程観察をしています。それによれば、2008年までの半世紀近くをならして見ると年平均71日見えているそうです。なかなかの見え方ではないでしょうか。そもそも、その国の最高峰を首都から年間何十日も望見できるのは、世界194の国の中でも日本だけなのです。
 その富士山も、都内では建物に上がらなければ見えにくくなってしまいました。地面に足をつけて眺める富士山を「路上富士」と言いますが、これは次章で扱いますので、まずは都会らしく建物の上から眺める富士山を見ていきましょう。
都内のあちこちに商業ビルだけでなく、住宅用の高層・超高層マンションが建設されています。21世紀の東京の特徴でもあります。それらの多くはいずれも富士が見える事を売りにしていますが、基本的に居住者しか入れません。千葉県で述べた「アイ・リンクタウン展望施設」のような例が広がっていくと嬉しいのですが。
 地域ごとに見ていきましょう(23区は東京都産業労働局「東京の産業と雇用就業」、多摩は気象庁の区分をもとにします)。

*都心地域 (千代田区、中央区、港区)
丸ビル(千代田区)35階に、お堀の上国会議事堂、そして 富士山を眺められるスペースがあります。ダイヤモンド富士も可能ですが、気づいている人はまだあまりいないようです。世界貿易センタービル(港区)の40階シーサイドトップは2009年にリニューアルし落ち着いた雰囲気展望台になりました。東京タワーを見るのにふさわしい場所です。もちろん富士山は見えます。その東京タワー(港区)は、高さではスカイツリーに負けましたが、依然として人気のスポットです。六本木ヒルズ森タワー(港区)は、屋上に出ることもできます(東京スカイデッキ)。お台場のフジテレビ球体展望室「はちたま」(港区)は東京湾とビル群を手前に富士山が眺められます。明治大学リバティタワー(千代田区)は一般にも開放されており、エレベーターホール付近から駿河台からの富士山が望見可能です。ある世代にとっては、大学施設の様変わりに驚くことでしょう。

*副都心地域(新宿区、文京区、渋谷区、豊島区)
 副(新)都心では代表が都庁(新宿区)です。45階(地上202m+地盤34m)に南北展望室があります。新宿区には超高層ビルが何棟もありますが、富士山展望に優れているのは、新宿野村ビルと 新宿住友ビル(三角ビル)です。窓枠の仕切り板が鏡になっておりダブルで景色を楽しむことができます。文京区役所シビックセンター25階展望室(地上110m+8m)からは新宿の超高層ビルの間、特に都庁の左側に富士山が並び東京の都市景観の一つの象徴です。しかし、2009年い目の前に150mの高さの住宅・オフィスの複合ビルができました。幸い富士山は健在ですが、非常にバランスの悪い景観になってしまいました。恵比寿ガーデンプレイスタワー(渋谷区)からはエレベーターホール前からの展望です。サンシャイン60(豊島区)は60階と屋上にスカイデッキがあります。ダイヤモンド富士の穴場だったのですが、近年宣伝をはじめ、大変賑わうようになりました。

*城東地域(台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)
 お台場のパレットタウンの大観覧車は,行政上は江東区になります。バレンタインデーの頃にダイヤモンド富士になりますので、お楽しみください。テレコムセンター展望台(江東区)は穴場的なスポットの一つです。足立区役所は14階に展望レストランがあります。利用者の口こみに「夕やけに映える富士山も有名である」とありますから、知る人ぞ知るところではあります。江戸川区はタワーホール船堀という総合区民ホールに展望塔があります(地上103m+地盤1m)。手前に高速道路と荒川、その先に高層ビル群がならび、その奥に富士山という、よりワイドな景観です。葛西臨海公園(江戸川区)の大観覧車は、富士山の方向がパレットタウンの観覧車とほぼ一致しています。

*城南地域(品川区、目黒区、大田区)
船の科学館展望室(品川区)は行政上は品川区になります。品川埠頭の背後に富士山が見えます。
早い時間から行けるのが羽田空港(大田区)の展望デッキです。特に2010年にリニューアルし国際線ターミナルの展望デッキは24時間オープンしています。一角には「富士見台」もができました。ここからは六郷川とモノレールを入れた富士山の写真が狙えます(但し、飛行機は入りません)。蒲田東急プラザ(大田区)の屋上には1周約3分半のかわいらしい観覧車があります。観覧車ダイヤを狙っている以上恥ずかしがるわけにいきません。時間をはかって乗り込みましたが、ちょっとずれてしまい、2周して何とか撮ることができました(2011年2月22日)。
 大田区には池上会館という区の施設もあります。屋上が展望台になっています。

*城西地域・城北(世田谷区、中野区、杉並区、練馬区、北区、板橋区)
 世田谷にはキャロットタワー26階(100m+地盤30m)に展望スペースがあります。富士山との間に高い建物がないのですっきりと眺めることができます。
 杉並区の施設あんさんぶる荻窪の6階は屋上庭園になっています。知人に教えてもらいダイヤモンド富士の撮影に行きました。穴場でした。
 練馬区役所は20階(地上75m+地盤40m)に展望ロビーがあります。同じフロアにそのものずばりの「練馬展望レストラン」もあります。ここからも富士山が眺められます。展望ロビーが混んでいる時は、各階のエレベータホールの前の窓から可能です。
 北区のシンボルの北とぴあは、17階にゆったりとした展望ロビーがあります。但し、富士山は通路の突き当たりになるので、ダイヤモンド富士の時など場所の確保が大変です。
 こうした公共施設は、展望に絶好の条件の年末年始が休みになってしまうのが残念です。
 都内からの富士山展望の特徴は、電車からのビル越しの車窓富士が楽しめることです。これについては●●章でご説明します。

*多摩南部
 多摩地区と言っても広いので場所によりますが、手前に丹沢山地があり、その上に僅かに頭を覗かせるのが特徴です。平地からは「消え富士」的な見え方になります。また、多摩ニュータウンに代表される丘陵地の住宅開発により、思いがけない展望ポイントができています。
町田市では小山田緑地みはらし広場が百景に入っています。
 稲城市では、若葉台駅に隣接したフレスポ若葉台の屋上駐車場が便利です。富士山と小田急、京王線の電車をワンショットで写せます。商業施設の屋上(駐車場)は隠れた展望スポットでもあります。
多摩市と稲城市の境界付近にあるみはらし緑地は、多摩ニュータウンの中でも最も眺望の良い絶景ポイントのひとつです。鉄塔や送電線越しになりますが、首都圏ではやむをえません。多摩市最高地点の天王森公園(一等三角点があります)より良い見え方です。ここからすぐの浜坂聖ヶ丘橋からは送電線などが邪魔することなく丹沢、富士、大菩薩の広い展望が得られます(訪れるには多摩大学を目標にするとよいでしょう)。百景では多摩市からはパルテノン多摩と鶴巻西公園が選ばれています。パルテノン多摩は、パルテノン神殿を模したパーゴラからのトンネル富士になります(木が伸びて見え方はごく僅かです)。一押しは富士見通りです。「宝野公園と奈良原公園に続く中央の広場を富士山がよく見えることから、通称「富士見通り」と呼ばれています」(多摩市ホームページ)。通りの両側の満開の桜の間に富士山が眺められます。富士見地名からの富士山と桜、是非一度はご覧ください。
 八王子市では駅ビル屋上です。南口の再開発で地上41階の超高層マンションができ、富士山が隠されるのではないかと心配されましたが、大丈夫でした。
 変わったところでは南大沢輪舞歩道橋(南大沢駅そば)があります。丸い歩道橋に4つアーチがあり、その1つから富士山が見えるのです。アーチ形トンネル富士です。現代版桶屋富士と言ってもよいでしょう(●●参照)。
 陣馬山から高尾山にかけての山岳部も八王子市になりますが、これは●●で紹介します。

*多摩北部
東久留米駅の富士見テラス(東久留米市)は百景にも選ばれており、最近は有名なポイントになりました。「まろにえ富士見通り」の先に邪魔なく眺められます。ダイヤモンド富士の時にはここの混雑をきらって東久留米イトーヨーカドーの駐車場から撮影する人もいるようです。
 狛江市は多摩川の水道橋付近がポイントです。河原に下りると水道橋の橋脚の間から覗くことができます。名づけて「橋脚富士」。NHKTVの「美の壺」に出演した時に紹介しました。調布市の文化会館たづくりには立派な展望室があります。ガラス越しになりますが、落ち着いて眺め撮影ができます。丹沢から奥武蔵までワイドな展望が広がります。
府中市の都立浅間山公園は百景の一つです。やはり百景に選ばれているのが国立市の駅前の円形公園で、南口ロータリー内にあります。富士見通りの先に富士山が見えますが、電線、電柱が煩わしく、地中化が望まれます。高架になった駅ホームの西端なら邪魔は少なくなります。
 立川市は立川駅ビル8階の喫茶店です。席により手前のビルに遮られますが、おおむね良好です。篤志家が詳しい山名注記入りのパノラマ展望写真を用意してくれているのも嬉しいことです。2010年は大晦日にダイヤモンド富士をここで見て、1年を締めくくりました。百景に選ばれている多摩川緑地は堤防にそって広い区間で眺められます。

*多摩西部
 山岳地帯が中心ですが、気象庁の区分では、瑞穂町や福生市、羽村市もここに入っています。瑞穂町からは百景に、瑞穂ビューパーク・スカイホールと、六道山公園展望台が入っています。六道山公園には高さ13mの立派な展望台があり、わかりやすい展望板説明板が設置してあります。南西方向に富士山は良く見えるのですが、北面は樹林に遮られており野鳥の説明板になっています。位置的には赤城山や男体山方面が見えるので惜しいところです。
さて、奥多摩の山からは山頂や稜線からはいずれも富士山がよく見えます。東京都の最高峰でもある雲取山(山梨、埼玉県境)からは、吉田大沢の崩壊谷をほぼ正面にした姿を見せてくれます。雲取山を起点に山梨県、埼玉県との境界になる尾根からはいずれも富士山を望むことができます。また奥多摩駅まで向かう石尾尾根は、七ツ石山から鷹ノ巣山を経て六ツ石までは常に富士山を眺めながら歩ける快適な展望登山道です。三ノ木戸山まで望めます。大岳山、御前山、三頭山の奥多摩三山からももちろんよく見えます。百景であがっているのは馬頭刈山周辺だけですが、周辺と書いてあるように、山頂からは見えませ(直下で可能です)。

*島嶼部
 伊豆諸島からも富士山は見えます。百景には伊豆大島最北端の、岡田港を見下ろす「港の見える丘」が選ばれています。鳥居越しの「トンネル富士」(額縁富士)が眺められるところもあります。
 そして何と言っても貴重なのが八丈島です。古くから目撃・伝聞証言はありましたが、証拠写真がない状態が続きました。誤報が流れたこともありました。間には海しかなく、障害になる山はないのですが、その海が問題でした。冬場の展望シーズンには空気が冷たいため、暖かい黒潮から発生する水蒸気が上がり視界を遮るのです。黒潮が蛇行して冷水域が八丈島と本州の間に生じる時しかチャンスがありません。その数少ないチャンスにチャレンジして見事な証拠写真を撮影されたのが千葉県の吉野宏さん・百理枝さん夫妻でした。2006年12月に西山(八丈富士)から、そして2008年12月には最遠望の東山(三原山)から271qの彼方の富士山の撮影に成功されました。富士山を眺めるのに海の情報が必要というのはいかにも島国日本にふさわしいことかもしれません。
 東京は、都市部も山岳部も島嶼部も含めて、文字通りの望岳都です。
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