富士山頂 お鉢のピーク名称の混乱 | |||||||
2015年5月 | |||||||
富士山頂にある8〜11(13とも)のお鉢のピーク名の内、2つが入れ替わっている。 |
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具体的には成就岳と朝日岳が入れ替わっている。 図1は富士山についての基本文献である『富士山 富士山総合学術調査報告書』(1971年)に掲載されている「山頂の地形」を複写したもの。 |
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図1 |
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図2は、環境省の富士登山オフィシャルサイトhttp://www.fujisan-climb.jp/basic/trails/others.html に掲載されているものである(2015年5月現在)。 |
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図2 | |||||||
比較してみると、図1の大日岳が成就岳になり、成就岳が朝日岳になっている(大日岳の別称が朝日岳である)。従って両者の位置が入れ替わったことになる。 |
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登山地図の分野では一番知られている昭文社の山と高原地図「富士山」を見てみる。 図3は、スマホ用のアプリの画面である(紙地図と全く同じ内容)。 これは環境省と同じ配列になっている。 編集部に尋ねたところ、2014年版からこうしたとのこと。 富士山本宮浅間大社に照会した結果である。 |
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図3 | |||||||
名称については、 「1868年に明治政府が発した神仏分離令に基づき、1874年に山頂の仏教的施設及び仏像が撤去された。また、仏の名に因んで命名された山頂の各頂部の名称も変更され」た。 (http://www.yamanashi-kankou.jp/kankou/spot/wh_1-1.html) 釈迦ヶ岳→白山岳 薬師岳→久須志岳 大日岳→朝日岳 阿弥陀岳→伊豆ヶ岳 勢至ヶ岳→成就ヶ岳 (観音岳→成就ヶ岳 という考えもある) 浅間ヶ岳→駒ヶ岳 文珠ヶ岳→三島岳 (ヶ の有無は出典により異なる) |
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最高峰の剣ヶ峯はそのまま。 大日岳は、現在は朝日岳になっているが、他のピークと異なり、大日岳 のまま使われていたようである。 |
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ところで、『富士山 富士山総合学術調査報告書』以外に、主要な文献ではどうなっているだろうか。調べた結果を記す。 いずれも「従来」の順番での記載になっている。 |
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●深田久弥編『富士山』(青木書店1940年) | |||||||
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●諏訪彰編『富士山』(同文書院1992年) 355ページの大著 | |||||||
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●富士学会企画『富士山を知る事典』(日外アソシエーツ2012年) | |||||||
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●「世界遺産富士山」のサイト | |||||||
構成資産の紹介のページで、次のように記載されている。 | |||||||
火口壁の周囲のいくつかの小高い頂部(剣ヶ峰、三島ヶ嶽、駒ケ岳、浅間岳、成就岳、伊豆岳、大日岳、久須志岳、白山岳)を仏教の曼荼羅に描く仏の世界に擬して「お鉢めぐり」と呼ぶ巡拝の行為を行った。 | |||||||
配列は、反時計回りであるが、従来の配列になる。 | |||||||
とりあえずの結論と課題 | |||||||
文献調査や問い合わせでわかったことは次の通りである。 | |||||||
1.従来の方式はずっと定着していた。古地図や古文書では不統一であるが(『富士山を知る事典』)、少なくとも1940年から変更はない。 2.普及している登山地図の記載が変わったのは、2014年版からであり、理由は富士山本宮浅間大社への照会の結果である。 3.富士山本宮浅間大社が何らかの理由で、入れ替えを判断したものと思うが、半世紀以上にわたり定着していた名称を入れ替えるだけの重大な理由があったのだろうか。もしそうだとしたら、その根拠を明らかにして欲しい。世界遺産の構成資産の説明にも、従来の配列が用いられており、その点でも明確な説明が必要であろう。 もちろん、所在の確認などで不都合がおこることは言うまでも無い。 ※現地で新しい標識が立てられているのかどうか、確認が必要。 |
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おまけ | |||||||
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