ダイヤモンド富士が見える範囲について
第1稿
シミュレーションを行いながら書いていったのだが、当初の意図と異なる結果になり、いささかわかりづらい記述になっているのではないかと思う。第1稿ということでご容赦願いたい。
2015年2月26日
ダイヤモンド富士が見える範囲は、富士山可視圏の中でも限られた場所である。
「富士山が蝶ネクタイをした範囲」と説明することがあるが、富士山の東側、西側の限られた範囲である。
下のダイヤモンド富士マップを見ていただくとイメージがつかんでいただけると思う。
東側からは沈むダイヤモンド富士、西側からは昇るダイヤモンド富士になる。
真田則明さん作成ダイヤモンド富士マップ
ところで、その範囲を定量的に表現するとどうなるだろうか。
ウィキペデイアのダイヤモンド富士の項 には次のような記載がある(2015年2月26日現在)。
「富士山頂から西側の南北35度以内の範囲では日の出の時(昇るダイヤモンド)、東側の南北35度以内の範囲では日没時(沈むダイヤモンド)に年2回」
年2回というのは、条件をつけないと正確ではないが、今はそのことには触れない。問題なのは、「南北35度以内」としていることである。何故35度なのかは説明がない。ダイヤモンド富士の項にノート欄を作り、問い合わせをしているが、2015年2月26日現在応答はない。
天文現象であるので、計算により求めることができるはずだが、以下では、実際に撮影された写真やカシミール3Dなどを使った「実証的方法」で何度になるのか、求めてみたい。
なお、南北35度というのは、真東(90度)、真西(270度)を基準にしてそこからの角度と判断する。北(0度)を基準にすれば、「東側の南北35度以内」というのは、55度〜125度以内ということになる。
◆限界のダイヤモンド富士と見える範囲の考え方
限界のポイントは、東側が北東、南東、西側が北西、南西 になる。
実際に北東、南東、南西の3箇所は撮影されている。北西はCGであるが、以下をご覧いただきたい。http://yamao.lolipop.jp/fuji/premium/genkaidaiya.htm
それぞれのポイントの経緯度を求め、富士山頂(剣ヶ峯)からの方位角を求めれば、見える範囲の角度を求めることができる。
経緯度から方位角を求めるには色々な方法(ソフト)があるが、国土地理院の「測量計算サイト」の「距離と方位角の計算」を利用した。
それぞれの値 ( )内は標高
北東限:茨城県鉾田市玉田 北緯36度13分15秒、東経140度33分45 (15m)
南東限:南房総市白浜町 北緯34度54分09秒, 東経139度50分14秒 (0m)
北西限:御嶽山継子岳 北緯35度55分02秒, 北緯137度29分11秒 (2859m)
南西限:大峰山仏生ヶ岳付近 北緯34度08分09秒, 北緯135度54分32秒 (1730m)
富士山剣ヶ峯:北緯35度21分38秒, 東経138度43分39秒 (3776m)
◆計算結果
北東限: 60度 (191q)   真東から30度「北」
南東限:116度 (113q)   真東から26度「南」
北西限:299度 (128q)    真西から29度「北」
南西限:243度 (292q)   真西から27度「南」
上記は限界の地点の方位角である。実際には観測地点までの距離、標高の違いなどもあり、すべての観測地点がこの値になるわけではない。特に近くではこの値とは大きく異なる結果になる。
北東から見た場合 沈むダイヤ 冬至
●高尾山 富士山からの距離約55q、標高約600mの高尾山は冬至の頃に北東限のダイヤモンド富士になる山として知られている。
2010年12月23日撮影
富士山からの方位角は図のように約58度である。真東からは32度「北」になる。
剣ヶ峯から見た高尾山のCG(カシミール3Dによる)
●笹目橋北西 北緯35度48分40秒,東経139度38分22秒 59度 真東から31度「北」 (97q)(右端)
(ダイヤモンド富士の定義)
今更だが、ダイヤモンド富士の定義を確認しておこう。太陽が富士山頂にかかっていればよいのであり、必ずも真ん中にくる必要はない。ただ、それでも一般的イメージとかけ離れてはいけないので、限界は富士山頂の左右両端に太陽の真ん中がかかった場合として、シミュレーションを行うことにする。笹目橋北西は右端限界の例である。日付は2015年の夏至(6月22日)、冬至(12月22日)とする。
●花の都公園付近1 北緯35度26分26秒, 東経138度51分03秒 52度 真東から38度「北」 (14q)(左端)
●花の都公園付近2 北緯35度26分39秒, 東経138度50分52秒 50度 真東から40度「北」 (14q)(真ん中)
●花の都公園付近3 北緯35度26分49秒, 東経138度50分48秒 48度 真東から42度「北」 (15q)(右端) 
花の都公園付近1〜3の所在  扇の向いている方向が富士山
このように富士山までの距離が近い場合には、相対的に富士山が大きくなる(太陽が小さくなる)こともあり、限界点への方位より非常に広い範囲で見ることが可能になる。35度どころか42度にまでなっている。この付近は多くの人が撮影、鑑賞に来る所であるので、例外的という扱いをすることはできない。
一義的に「35度以内」という表現をすることができないのは、北東側の考察だけでも明らかであろう。
◆北西から見た場合 昇るダイヤ 冬至
●上高下(かみたかおり)  北西側では、正月前後にダイヤモンド富士になるので有名な山梨県上高下は、約34q、約305度になる。従って真西からは35度「北」になるので、ウィキペデイア記載の「西側の南北35度」の内、北については、該当する地域があることになる。
剣ヶ峯から見た上高下のCG(カシミール3Dによる)
なお、その時(冬至)のダイヤモンド富士は次のようになる。山頂左端ギリギリのダイヤモンド富士である。
上高下からのダイヤモンド富士のCG(カシミール3Dによる)
山頂の真ん中になるためには、もうすこし南に寄る必要があり、その地点の方位角は約304度になる。真西からは34度「北」になる。
上高下地区の真ん中ダイヤになる地点(カシミール3Dによる)
●朝霧高原1 北緯35度26分04秒, 138度38分15秒 315度 真西から45度「北」 (12q)(左端)
●朝霧高原2 北緯35度25分55秒, 138度38分07秒 313度 真西から43度「北」 (12q)(真ん中)
●朝霧高原3 北緯35度25分46秒, 138度38分01秒 312度 真西から42度「北」(11q)
朝霧高原1〜3の所在  扇の向いている方向が富士山
花の都公園付近同様、近場では、35度を大きく上回る地点が限界になっている。上高下が35度と書いたが、近くなるとそれどころではない!
この朝霧高原も昇るダイヤモンド富士撮影、観測地点として知られている場所であり、例外扱いすることはできない。
南東から見た場合  沈むダイヤ 夏至
●御殿場 北緯35度18分44秒, 東経138度53分02秒 111度 真東から「南」21度(15q)(左端)
地図
冬場と違って南から見る時は、近場の方が、東に近い値になる。南東限からは真東から26度南だが、ここは21度にしかならない。左端の例しか示していないが、右端はもっと北になり(東に寄り)値が小さくなる。
◆南西から見た場合 昇るダイヤ 夏至
朝霧高原 北緯35度19分42秒, 138度36分25秒 252度 真西から18度「南」(12km)
南東からと同様に、近場では、真西からの隔たりは小さくなる。
◆とりあえずの結論
北側と南側、冬至と夏至では、それぞれ東西方向からの角度は異なり、さらに、近くで眺めるか遠くで眺めるかにより、その値は大きく異なってくる。「南北35度以内」などと一括して表現することはとてもできないことである。
上記シミュレーションは全地域を網羅しているわけではないが、それを参考にしてあえて表現すれば、次のようになるだろうか。
富士山頂から西側は、真西の方向を基準にして北へ40数度南へ20数度の範囲で、日の出の時に昇るダイヤモンド富士、東側では真東の方向を基準にして、北へ40数度南へ20数度の範囲で、日没時に沈むダイヤモンド富士を見ることができる。
何ともわかりにくい説明になるが、致し方ない。冒頭のダイヤモンド富士マップを添えておけば、理解しやすいだろう。
補足
小著『今日はなんの日、富士山の日』では次のように書いている。
「富士山の東北東(約58度)〜南南東(約117度)、西南西(約243度)から西北西(約302度)の範囲ということになります」
これは、近場のことを考慮していない記述であったので、増刷の機会があれば訂正したい。
思い違いによる誤記やタイプミスなどがあるかもしれません。お気づきの点はこちらまでご連絡いただければ幸いです。
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