「地理」2005年4月号
特集 楽しい地図をつくろう
高校生がつくる地図作品−課題レポート「地図をつくる」の実践と作品展示
2013年9月掲載
編集部のインタビューに答えたものです。掲載時のもとは若干ことなるところがあります。

――田代先生のHPには、課題学習で生徒が作成した地図がたくさん掲示されていますね。どんな指導によって地図がつくられているのか、地図づくりにはどんな意図があるのか、舞台裏の事情をうかがってみたいと思います。

◎文化祭で地図を展示
――筑波大附属の文化祭に行った方から、「地図がおもしろかったよ〜」という情報が入りました。
田代 地理や世界史では、夏休みの課題の作品を文化祭で展示しています。おかげさまで、保護者だけでなく地域の方にたいへん好評をいただいているようです。文化祭に掲示される、ということで、気をいれて作品をつくっている生徒もいます。
――HPもたいへん充実していますね。全作品が掲示されているのには驚きました。
田代 タイトルが「山尾先生の筑附通信」で、サブタイトルが「地理 地図 山岳展望 富士山」です(山尾先生というのはインターネット上のハンドルネームですが、これを本名と思う人もいるようです)。これからもおわかりのように、本業と趣味がまざっているのですが、何でもありの地理らしい、といわれることもあります。地理のコーナーに生徒の作品や実態調査などを載せています。
【書けばきりがないので、とりあえずこの程度にします】

――どんな種類の地図が作品として出てくるのですが
田代 なんらかの統計数値によって日本の都道府県や世界各国を色分けしたものが最も多いです。最も高度なものはカルトグラム(後述)。重ね地図もみとめています。自分でフィールドワークをしてルートマップや身近な地域の地図をつくる生徒もいます。少数派ですが、正距方位図法やそれに類する図法でオリジナルの地図をつくる子もいます。
――地図づくりにあたって、元となるデータも本人が探すのですか
田代 はい、そうです。どんなテーマを選ぶか、どんなデータを使うか、どんなデザインにするか、すべて自分で考えていくわけです。質問があれば、例えばどこに行けばデータがあるかなどは、教えます。

◎課題の出し方
――課題は毎年変えているのですか
田代 今の勤務校には1997年に赴任しました。夏休みの課題を出すことは伝統になっていましたので、私もその流れを踏襲し、最初の年は地図以外に、紀行文・社会問題・海外体験、さらには地理にちょっとでも関われば何でも良いという、自由度の高い課題を出しました。地図に限定したのは、赴任3年目からです。地図限定といっても、指定した規格(後述:紙の大きさなどを指定)であれば、アイデアの多様性は認めています。
――課題を出すにあたって、どんな事前指導をしているのですか
田代 じつは簡単なプリントを配るだけで、そのための授業は特にやっていないのです。後はHPを見るように、と。メールでの質問は可としています。
――事前学習なし、というのは驚きました!
田代 週2時間(地理A)だけであり、教育実習もあるので、授業時間の確保が大変なのです。ただ、あうんの呼吸で通じなくなってきた部分がありますので、少し時間をとって指導しなければと思い始めています。


――生徒はどれくらい時間をかけて作品をつくっているのですか
田代 いろいろです。1時間で済ませた子もいますし、3週間かけたという子もします。

――生徒の作品をこれだけ見やすくHPに掲載するというは、いろいろと工夫がありそうですね。
田代 そうなんです。目立たない部分ですが、いろいろ工夫を重ねてきました。「文化祭に展示する」そして「HPに掲載する」ためには、本質的なことではないかもしれませんが、地図の大きさを揃えることが非常に大切です。現在、A3判の横置きにしています。そうすることで、文化祭での展示が見やすくなり、HP掲載のためのデジカメ撮影も簡単になります。課題は返却せず保管しているのですが、規格が同じですと保管もしやすいのです。なお、忘れた者がいると、撮影する際に順番がずれてしまい後の処理が大変になります。提出日を厳守させることが大事です。

――たしかに、大きすぎる地図は見づらいですからね。定められた大きさのなかで見やすい地図表現を考える、というのも、地図づくりの大切な要素といえそうです。
田代 もともとは作品を整理して掲示する都合で規格を決めたのですが、枠のなかに収める、そし見る人のことを考えて工夫する、という効果はあるようですね。

――なるほど、プレゼンテーションを意識して地図をつくるわけですね。
田代 はい、プレゼンテーションは地図の重要な役割の一つですから。後で評価の部分でご説明しましょう。さらに細かい工夫としては、地図の上に名前、地図のタイトル、見どころを記入するようにしました。これがないと、文化祭の展示のときに、地図の下に張り紙をしなければなりません。最初からA3のなかにすべての情報が入っていれば、展示でもHPでの掲載でも、そのまま使えて、見る人も内容を理解できます。

――なるほど、いわれてみないと気づかない、実践ならではのアイデアですね。
田代 規格を決めていない時代は、立体模型地図や経帷子式の路線図など、ユニークな作品も登場していましたので、そういったおもしろさ・意外性はなくなるというデメリットはあります。しかし、文化祭やHPに掲載する、そのために創意工夫する効果もかなり大きいので、A3の規格はしばらく続けていくつもりです。

◎生徒の工夫/どこを評価するか
田代 いちばん大事なのは内容の「オリジナリティ」です。評価は点数化してはいませんが、オリジナリティが6〜7割を占めると思います。残りの半分は、「美しさ」です。プレゼンテーションとしての工夫です。最後に、「努力」ですね。
――美しさの点で、今までどんな秀作がありましたか
田代 毎年いくつか、これは素晴らしい、と思うものがあります。**************
(海外の学校にプレゼントした作品など)

――地図の美しさに関しては、アート系のセンスが問われる部分ですね。私はどうも自信がありませんが(笑)。
田代 地図としてはオリジナリティがあり、労作でもあるのですが、色彩としての工夫がないために損をしている作品もありました。文化祭やHPの作品としては、「美しさ」も重要になってきます。美術の先生が関心をもってくださり、中学の美術で、統計から地図をつくらせることがあると伺いました。他教科との情報交換も必要ですね。

――きれいな地図が描ける子どもにとって、地理という教科が、楽しく特技を活かせるものになるのはすばらしいですね。将来、アート系の人たちから「地理はいい教科ですよ」という声が出てくるといいですね。美術と地理に接点があったとは、意外な発見です。
田代 オリジナリティの面でも、美しさの面でも、もっと細かく指導をすれば、美術展などに出せるような作品が出てくるかもしれません。それは今後の課題です。

◎カルトグラム
――高校生がここまでつくるとは、正直驚きました。
田代 私は個人的には、カルトグラムが好きなのです(笑)。作り方は難しいので、プリントに詳しく書いていますが、毎年、各クラス数人の生徒がつくってきますね。苦労したわりに仕上がりは今ひとつおもしろくないので、色分けの工夫も必要になりますね。すべての国(あるいは都道府県)のデータがないと作れないという制約もあります。

――そういった苦労があるのかもしれませんが、完成したときの達成感はかなりありそうですね。

田代 はい、そう思います。オリジナリティもかなり実感できることでしょう。カルトグラムをつくると、略地図の書き方がうまくなります。その点でも、カルトグラムはおすすめですよ。

◎コピー&ペーストの問題を超えて

――最近、大学のレポートでもインターネットからコピーして、そのままペースト(はりつけ)した安易なものが多く、問題になっているようですね。地図づくりの課題学習ではどうですか。
田代 文章のレポートに比べて、コピー&ペーストしにくいのでしょうが、ベースとなる地図をそっくりコピー&ペーストしてくることは来考えられます。自分で工夫してほしい課題ですから、やってほしくないですね。それに、私の場合は作品をHPですべて公開していますから、「盗作」を掲載したらいちばん恥をさらすのは本人となり、安易なペーストを防止する効果にはなっているようです。

◎地図づくりのすすめ
田代 文化祭に展示することをまずおすすめしたいです。生徒もはりきりますし、地理のアピールにもなります。保護者や他教科の教員はもちろん、地域へのPRも大変重要。本来学校は地域の文化センターの役割を担っていくべきと考えています。そこで地理はぜひPRしてほしいですね。今の勤務校に赴任する前は、神奈川県のさまざまな高校で地理を教えてきました。地図づくりの実践も続けてきました。学校の実情に応じた工夫をすることにより、いろいろなことができると思います。座学、講義式の授業だけでは見えない生徒の素晴らしい力を実感することができます。ぜひ、読者の皆さんも、生徒の地図づくりを実践してみてください。
――本日はありがとうございました。
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